2010年の朝青龍事件や市川海老蔵事件、そして、2019年に報じられた「雨上がり決死隊」の宮迫博之(当時49)や、 「ロンドンブーツ1号2号」の田村亮(当時47)らの「闇営業」事件。この10年、“半グレ”と呼ばれるヤクザ者と、芸能界の深い関係が明らかになってきた。“半グレ”はどのように生まれ、どうして芸能界に接近したのか。2004年から2019年までの15年間、 『週刊文春』の特派記者としておもに刑事、公安事件の取材・執筆を担当してきた大島佑介氏の著書、『半グレと芸能人』(文春新書)より、一部を抜粋して紹介する。
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金塊強奪犯と一緒に飲んだ宮迫
吉本興業の闇営業問題は、世間に改めて半グレと芸能界との関係性を浮かび上がらせることとなった。
そして、闇営業問題を最初に報じた『FRIDAY』は、2019年8月2日号で芸人の宮迫博之が当初問題となった詐欺グループとは別の半グレと一緒に写っている写真を掲載した。大阪・キタのキャバクラで反社会的勢力と一緒にポーズを決めている写真は波紋を呼んだ――。
宮迫と笑いながら写真に収まっていた人物は、2016年7月に福岡県・JR博多駅近くのビルの前で白昼堂々、約7億6000万円相当の金塊を強奪したとして、翌年5月に逮捕された名古屋の半グレの野口和樹(当時42)だった。
『FRIDAY』によると、野口は福岡で金塊を強奪した約3週間後、北新地にあるキャバクラを訪れて宮迫と酒杯を交わしたという。その時の様子を店の関係者が同誌で次のように証言している。
「彼(野口被告)らのグループは男性陣が4人ほどでした。彼らが座ったテーブル席の奥にある個室で宮迫さんが仲間と飲んでいたんです。男性4人の中の一人が宮迫さんと知り合いだったみたいですね。宮迫さんが彼に気づいて挨拶していた。そこで一緒に乾杯しようということになって、高級なシャンパンを注文していました」
闇営業問題に追い打ちをかけるように掲載されたこの記事には、宮迫が野口と同席していた男性から謝礼として5万~10万円の金銭を受け取っていたという関係者の証言も載っている。
だが、宮迫本人は一連の闇営業問題を受け、ロンドンブーツ1号2号の田村亮と2019年7月に行った記者会見の際、「トイレから出てきたところで頼まれて撮影された」「ギャラは受け取っていない」と金銭の授受を否定し、野口とも面識はなかったと主張したものの、この写真を掲載した『FRIDAY』が発売された7月19日に吉本興業から契約解消されている。