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「西の関東連合を目指す」大阪・ミナミの半グレはなぜ増えたか

2019年は300人以上の半グレを逮捕 (『半グレと芸能人』より#1)

2020/10/16

source : 文春新書

genre : ライフ, 社会, 読書, ライフスタイル

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 2010年の朝青龍事件や市川海老蔵事件、そして、2019年に報じられた「雨上がり決死隊」の宮迫博之(当時49)や、 「ロンドンブーツ1号2号」の田村亮(当時47)らの「闇営業」事件。この10年、“半グレ”と呼ばれる集団と、芸能界の深い関係が明らかになってきた。“半グレ”はどのように生まれ、どうして芸能界に接近したのか。2004年から2019年までの15年間、 『週刊文春』の特派記者としておもに刑事、公安事件の取材・執筆を担当してきた大島佑介氏の著書、『半グレと芸能人』(文春新書)より、一部を抜粋して紹介する。

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「桜を見る会」に出席した半グレ

  半グレたちが跋扈しているのは首都圏ばかりではない。2019年7月に放送された『NHKスペシャル』では、大阪・ミナミの半グレ、「拳月」(ケンムン)こと相良正幸と、「テポドン」こと籠池勇介を中心とした半グレグループを特集した。吉本興業の闇営業騒動の真っただ中に放送された特集は大きな反響を呼んだ―― 。

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 ミナミの半グレグループ「O7」(アウトセブン)を率いる相良正幸は奄美大島出身。関西の地下格闘技団体「強者」(つわもの)で活躍していた元格闘家だった。

「強者」は六代目山口組、神戸山口組ともつながりの深いYが創設した団体であり、その成り立ちから極めて「暴力団的要素が濃い集団だった」(大阪府警担当記者)という。

「不良少年や引退した格闘家を集めた『強者』の大会の運営には、当初から暴力団関係者の存在が見え隠れしていました。大会では六代目山口組系の幹部がリングサイドに座っていることもありました」(同前)

©iStock.com

 揃いのTシャツを着てミナミの飲食店などに試合のポスターを貼ることやチケット購入の強要行為などを頻繁に繰り返していた強者は、一時は「西の関東連合を目指す」などと嘯いていたようだ。格闘技団体としての強者は2013年に解散したが、活動中には有名人を巻き込んだトラブルも起こしている。

NHKスペシャル「半グレ 反社会勢力の実像」HPより

「2013年9月には前田日明(あきら)が大阪市内で格闘技大会『THE OUTSIDER』を主催した際、『事前に挨拶がなかった』などとして前田に『調子乗んなよ、コラッ』などと詰め寄り、大会を一時中断させました。この事件では翌2014年に強者関係者数名が暴力団担当部署の大阪府警捜査四課に威力業務妨害容疑等で逮捕されています」(同前)

 創設者のYは強者解散後に石垣島に移住。安倍晋三首相(当時)主催の「桜を見る会」に出席したことでも話題となったYは、石垣島で飲食店等を手がけていたというが、暴力団との関係は切れておらず、2017年には知人から現金5000万円を脅し取ったとして恐喝容疑で山口組系組長と一緒に逮捕されている。