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「面接した女のコは6000人、うち800人は…」筆者も驚いた“郡山の風俗王”が生み出した革新的サービスとは?

ベストセラー『売春島』著者が徹底取材

2020/10/11
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 夜の世界でのし上がることは、つまりヤクザと共生することを意味する。彼らの存在を避けて頭角を現すことなど不可能だろう。

 みかじめ料の要求に始まり、ヤクザを使った競合店からの嫌がらせ。降りかかる火の粉にどう対処したのだろうか。

「ヤクザはみんな面倒見ましたよ。ショバ代みたいなものも当然、月に100万くらいは払った。だけど、ヤクザとかカタギとか関係なく、人として気に入ったから付き合ったまで。警察も一緒です。覚醒剤の売人の捜査などの協力要請があれば、情報提供をする。それも全て街を良くしたいという気持ちから。ヤクザも警察も関係なく、人が困っていれば面倒を見る。嫌われるようなことは一切してないから当然、他店からの嫌がらせもないんです」

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インタビューに答える伊藤守氏(著者撮影)

 みかじめ料だけでなく、ときにはヤクザがカネを借りに来ることもある。あるヤクザは300万、またあるヤクザが500万。カネに困ったヤクザは伊藤の元に集まった。

「気持ちは貸すんじゃなくて、あげる。もちろん返済するヤクザもいれば、それっきりのことも。でも過去に金貸しやって取り立ては懲りてるから、『社長、助けてください』と相談されれば、基本はくれてやるんです。使えばまた戻ってくると思ってるから、あまりカネに執着がないんです。ヤクザが経営していて立ち行かなくなったレンタルルームを、ヤクザの言い値で買ってあげたこともありました。相場の倍の値段を提示されたのに、です」

面接したのは6千人、うち裸にしたのは800人

 それでもトラブルが全くないわけではない。アルコールが入れば強気に出る一般客も少なくないからだ。

郡山の歓楽街の街並み(2008年9月、著者撮影)

「店で客が暴れた末に誰かに助けを求めたらしく、ヤクザ口調の男から電話がかかって来たことがありました。それで私が電話に出て伊藤と名乗ると『申し訳ございませんでした』と瞬時に謝った。普通ならあーでもない、こーでもないと始まるところ、私の名前を聞くと大人しくなるわけです。

 郡山は、一時はA組織が進出してきたことがあったけど、基本的にはB組織が仕切っている。そのため、(Bは昔から世話してたから)上から下まで私の名前は知られているんです。そんな具合で、いまも昔も私に文句を言う人はいない。そりゃそうですよ、ヤクザから感謝状もらえるくらい世話をしてきたんだから。警察だってそうですよ、警察は潜入捜査ができない。その代役で何度、ウチの従業員に本番行為の疑いがある店の調査に行かせたことか。

 もちろんウチの女のコを含めた従業員も同じだよ。カネだけじゃなくて、例えば子ども堕ろすのに保証人になったり、リストカットだ自殺だっていうことでも心のケアをするし。いうなれば親代りだよね。特にこの業界は、母子家庭にDVと、いろんな問題を持つコが多い。10人に1人は心に病気を抱えてる。面接したのは延べ6000人、うち裸にしたのは800人。そのコらとは真剣に接してきました。美人だろうがブスだろうが一切関係ナシで」