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しらけた“サラリーマン三世”が日本社会をダメにするこれだけの理由

就業者の80%以上がサラリーマンの日本社会

2020/10/20
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 最近の政治家は二世・三世ばかりだという。議員になるには俗に言う三バン、つまり「地盤」=後援会などの支持組織、「看板」=知名度、「鞄」=財力がものをいう。このすべてを引き継ぐ世襲政治家が、さして苦労することもなく議員の座を手に入れ、政治を行う。もちろん鷹の子は鷹。優秀な血統で頑張っている政治家もいるが、一般国民の思いをまるで理解できずに自らの利権の確保ばかりに走る輩もいる。

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開業医までも「三バン」へ

 医者の世界も似たようなところがある。最近は開業医などの多くは二世あるいは三世が医者業を家業として受け継いでいるケースが多い。医者になるには大学の医学部を出て国家試験に合格しなければならない。成績優秀であれば問題はないが、中には親の「鞄」=財力でなんとか医学部に滑り込む子弟も多い。医者になって開業するにも、親が開業していた地で抱えていた患者たちは、「地盤」として引き継ぐことができる。またこれまで地域に根付いてきた抜群の知名度は、「看板」として威力を発揮するのだ。

 私自身は父親が医者であったが、代々引き継がれてきた医者ではなく、しかも勤務医であったため、特段に引き継ぐものがなかった。そんなわけで兄も私も医者にはならなかったが、父親の患者さんからは「なぜ医者を継がないのか」とずいぶんお叱りを受けた記憶がある。地盤、看板がもたらしたお叱りだったのだ。

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 二世・三世の医者がヤブ医者だというわけでは必ずしもないが、中には「お父さんは良い医者だったのに、あのぐうたら息子の先生にはあまりかかりたくないわよね」などと噂される医院も少なくない。

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 このように政治家や医者の世界ではいわば家業のような形で、代々受け継がれる職業が存在するが、実は日本社会の中ではこの二世・三世が大量増殖している。サラリーマンだ。サラリーマンは和製英語だが、戦後75年が経過する中で、このサラリーマンという家業が急成長しているのだ。