文春オンライン
欅坂46ドキュメンタリー映画に見た「悲劇」と「未来」 新グループが目指すのは‟再開発後の渋谷”ではない

欅坂46ドキュメンタリー映画に見た「悲劇」と「未来」 新グループが目指すのは‟再開発後の渋谷”ではない

10月13日は「欅坂46」最後の日

2020/10/13
note

改名後のグループに感じる「希望」

 このように本作はまた一面では、当初は平手の不在に動揺していたメンバーたちが、周りのスタッフからサポートを受けつつ試行錯誤を重ね、ついには、たとえ平手がいなくてもステージをきちんと務め上げるようにまでなる……という一種の逆境からのサクセスストーリーにも読める。その意味では、改名後のグループにも希望を抱かせるものとなっている。

 劇中のキャプテンの菅井友香らメンバーへのインタビューを見るかぎり、グループや平手について彼女たちのなかでもまだ整理し切れていないところもうかがえた。しかし、それでも彼女たちはあくまで前へ進もうとしていることは、十分に伝わってきた。
 

欅坂最後のキャプテンとなった菅井 ©文藝春秋

『僕たちの嘘と真実~』のラストシーンでは、渋谷パルコの屋上公園に菅井友香が立っているところから、カメラがドローンを使って徐々に上昇し、最後は渋谷の街が俯瞰で映し出される。渋谷パルコは2016年に建て替えのため一時閉館に入った際、欅坂の当時の全メンバーが旧ビルの屋上で写真を撮影したグループゆかりの場所でもある。昨年には新ビルが完成し、3年ぶりに営業を再開した。

ADVERTISEMENT

デビュー曲「サイレントマジョリティー」

 パルコ以外にも渋谷一帯では各所で再開発が進められていた。欅坂のデビュー曲「サイレントマジョリティー」のMVのロケ地となった工事現場は、もともと東急東横線の旧渋谷駅などがあり、撮影から2年後の2018年、渋谷ストリームとして生まれ変わった。欅坂の5年間は、渋谷の街とともに変貌を遂げた歴史であったともいえる。

 考えてみれば、日本の都市とアイドルの世界は、片や建物、片やグループもメンバーも絶えず入れ替わり、スクラップ・アンド・ビルドが繰り返されてきた点で共通する。残念ながら再開発後の渋谷は、ひとつひとつの建物には魅力的なところはあるものの、全体的にはかつての面影を失い、不便な点もあって、人々が慣れ親しむようになるまでにはまだしばらく時間がかかりそうだ。しかし、欅坂46改め櫻坂46にはそうなってほしくない。これまでファンやスタッフとともに培ってきたものを土台に、よいところは残しつつ、改名後はできるだけ長く人々に愛されるグループをぜひ、目指してほしい。

欅坂46ドキュメンタリー映画に見た「悲劇」と「未来」 新グループが目指すのは‟再開発後の渋谷”ではない

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー

関連記事