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「ほどほどの人生でもいい」日本人に“志”の低い人が多い理由――中野信子の人生相談

あなたのお悩み、脳が解決できるかも?

2020/10/25

source : 週刊文春WOMAN vol.3

genre : ライフ, 人生相談, ライフスタイル, 社会

note

 みなさまのお悩みに、脳科学者の中野信子さんがお答えします。

中野信子さん ©文藝春秋

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Q ほどほどの人生でもいいという志の低い生き方を変えるべき?――33歳・一児の母の銀行員からの相談

 私はかつて中学受験に失敗し、以後は絶対に高望みはしないようにしています。高校や大学の受験はA判定でも第一志望のランクを下げました。大学で留学のチャンスがあったときは、選考に落ちるかもしれないから説明会にも行きませんでした。

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 就職も無難に一般職採用。昇進試験や資格試験も受けません。実は、夫もいちばん好きだった男性ではありません。

 ほどほどの人生でも罰点がつくよりいいと思って生きてきました。ただ、子どもが生まれ、この子も同じような生き方になってもいいのかと不安になりました。失敗してもいいからもっとチャレンジする人生、失敗してもくじけない人生のほうがいいのではないかと。私自身が生き方を変えたほうがいいのでしょうか? 変えることはできるのでしょうか?

最新回は発売中の「週刊文春WOMAN 2020 秋号」に掲載中

中野信子の回答「生物にとって、志は高くなくてもいい」

A 多くの人が誤解しているようなのですが、志を高く持たなければならない合理的な理由は存在しません。人間も生物であり、生物にとって最も重要なのは生き延びることです。「失敗を避ける」という堅実な選択は、生き延びるために万全を期すという観点からは決して間違いではないのです。

 お馴染みのセロトニンという脳内物質は感情や気分を安定させる働きをしますが、これはセロトニントランスポーターというタンパク質に取り込まれ、再び分泌されます。セロトニントランスポーターの数は人によって違い、少ないタイプの人は不安を感じやすいことがわかっていて、日本人にはこのタイプが多いのです。