日本という地理環境に適応して生き延びられる戦略
それは日本に自然災害が多いということが関係しているのかもしれません。日本は世界の総陸地面積の1%以下の大きさしかないのに、災害は実に全世界の約20%が一国に集中して起こるという災害大国です。
セロトニントランスポーターの少ないタイプの人は不安をいち早く感じることで、災害の危険が迫った時にそれを回避したり、準備を整えたりしておくことで命を落とさずにすむ可能性が高くなったのだろうと推測されます。
災害が起こりやすいという地理条件というのはかなり長い間、変化することはありませんから、不安傾向の高い人たちだけが選択的に生き延びた結果、慎重で堅実な人たちがたくさんいる、日本という国が次第に形成されていったのだろうと考えられます。
あなたの堅実な生き方は日本という地理環境に適応して生き延びられる戦略です。確かに、ときには派手な挑戦を楽しんで生きる人を見て、羨ましくなることもあるかもしれません。しかし、だからといって、「失敗を恐れずチャレンジしよう、後悔しない人生を送るために」などと安易に勧めることはできないのです。
さらにいうならば、たとえお母さん自身が生き方を変えたとしても、お子さんは自分の脳が求める戦略を取ってしまうでしょう。もしかしたらそこにこそ不安を感じてしまうかもしれませんが、お子さんにあれこれ指示する以前に、あらゆる可能性を想定して、失敗してもリカバリーできるよう準備してあげることができるというのも、あなたのような女性が持つ卓越した能力の一つと言えるのではないでしょうか。
◆ ◆ ◆
中野信子さんにあなたのお悩みを相談しませんか?
みなさまのお悩みを woman@bunshun.co.jp(件名を「中野信子人生相談」に)もしくは〒102-8008 東京都千代田区紀尾井町3-23「週刊文春WOMAN」編集部「中野信子の人生相談」係までお寄せください。匿名でもかまいませんが、「年齢・性別・職業・配偶者の有無」をお書き添えください。
text:Atsuko Komine