8つある「南北間のチャンネル」
実は南北間の通信手段には、8つのチャンネルがあります。
「南北赤十字チャンネル」
「韓国の統一部=北朝鮮の祖国平和統一委員会の当局間チャンネル」
「東西海軍通信線」
「海事通信線」
「航空管制網」
「青瓦台(大統領府)=朝鮮労働党3号庁舎(金正恩委員長の執務室)のホットライン」
「国家情報院=北朝鮮統一戦線部チャンネル」
「国連軍の軍事停戦委員会」
ちなみに、「青瓦台=朝鮮労働党3号庁舎のホットライン」は文在寅政権になってできたもの、「国家情報院=北朝鮮統一戦線部チャンネル」は、今回の事件で北朝鮮が金正恩の異例の謝罪を含む「通知文」を送るのに使いました。
これら全ての手段を通じて、北朝鮮側に通報をしなければなりません。A氏が行方不明になったのが国境海域ですから「北側にA氏が流れていく可能性があるので、発見されたらすぐに返すように」と通報するべきだったのです。次に、韓国軍から板門店チャンネル、すなわち軍事停戦委員会を通じて通知をしなければならない。
さらに、特に敏感な海域での出来事ですから、国内外のマスコミに迅速に知らせる必要があった。もし、すぐに報じられていれば、北朝鮮は行方不明者を殺すことができないでしょう。
これらの手段を尽くしていれば、失踪したA氏を、北朝鮮側が宣伝として利用したとしても、殺すことはできなかったはずです。命を救うための措置を取る努力を全くしなかったのです。
救助措置をしなかった大統領に最も責任がある
2つ目は、文在寅大統領の責任が明らかになっていないという問題です。これまで見てきたように文政権はA氏を救うための措置をほとんどしなかったのですが、その判断の中心には文在寅大統領の存在がありました。
文大統領が、A氏失踪後30時間以上報告を受けていないと言っているのもおかしいですが、とにかくA氏が生存していた9月22日午後6時40分に報告を受けたのは事実です。しかし、文大統領は何の措置もしませんでした。救助措置や指示はありませんでした。つまり、大統領に最も責任があるのは確かです。
3つ目は、A氏殺害後の対応の問題です。A氏が射殺された後も、政府は事件を隠して北朝鮮に対しての措置を取らなかった。「国民にどのように言い訳をするか」について、全ての努力を集中させたのです。
A氏が殺害されて3時間経った頃、最初の関係長官会議が開かれましたが、生存していた期間には開かれていません。亡くなられた後に集まって大騒ぎしはじめた。