青瓦台(大統領府)と与党が持ち出した「言い訳」の中心は、「A氏が越北(北朝鮮へ亡命)したがっていた」と押し通すことでした。
文政権は、韓国軍の通信傍受で、北朝鮮軍がA氏に「なぜ越えてきたのか」と聞くと「越北」と答えたことを「越北したがっていた」理由に挙げていますが、これは証拠になりません。なぜなら生命が危機に晒されている絶体絶命の状況での供述は、証拠として認められないからです。A氏の失踪届が出されたのが21日午後1時で、北朝鮮軍に発見されたのは26時間半後です。その状況で、北朝鮮軍に銃を突き付けられているのに「私を韓国に返してほしい」といえるでしょうか。「越北したい」と言うしかなかったのでしょう。
不確かなことを政府が広める「蛮行」
冒頭で触れたように、非武装の民間人を殺害しただけでもありえない犯罪です。そして、その民間人が行方不明であれ、越北であれ、救出努力をするのは、政府の責務です。失踪者に越北の意思があったとしても、A氏の事件について韓国政府と軍の責任がなくなるわけではありません。
さらに、「A氏は越北したがっていた」という不確かなことを、政府と与党が先頭に立って広めるのは、猟奇的で、非人間的な蛮行です。
韓国政府は、国連安全保障理事会を通じて国際刑事裁判所(ICC)に、この事件を提訴しなければなりません。北朝鮮がICCに加盟していないため、すぐに提訴はできませんが、国連安保理の決議があればICCに提訴することが可能です。韓国は友好国と協力し、あらゆる努力を尽くして国連安保理決議案を可決させる必要があります。
文在寅政権は、金正恩を非人道的な犯罪者として提訴すべきですが、全くその動きはありません。北朝鮮が少なくとも「非武装の民間人を殺害した」ことは認めているのです。北朝鮮がA氏の遺体を燃やしたのか、それとも燃やさなかったのかという議論もありますが、遺体を損傷させたのは事実です。私も国防部を訪問して、北朝鮮がA氏の遺体を毀損したという内容を再確認しました。
いまは、むしろ金正恩が謝罪した“おかしな手紙”によって免罪符を与えようとしています。それが問題なのです。