昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/10/16

genre : ニュース, 社会

連続殺人をする大胆さがある一方で自信のなさも

 Aさん殺害を決めた理由については、「私以外の男性との付き合いがあるような雰囲気だった」と繰り返した。しかし、Aさんに恋人やそれに近い存在がいるかどうかの確認はしていない。白石被告にとって“ヒモ”にできる女性を見つけ、アパートの賃貸契約時のお金と契約金を除いた36万円を得たのに殺害してしまう。

 筆者が拘置所にいた白石被告と面会した時には「ちょっと考えが浅かった。人を1人殺す報酬として50万円は安すぎる。性欲だけに走ってしまった」とも語っていたが、白石被告が「まとまったお金」を入手できたのは、この時だけだ。

「私以外の男性との付き合い」があると、なぜ殺害の理由になるのか。白石被告は、もし自分を捨てて他の男性のほうに行ってしまった場合、50万円の返済を求められるのではないかと思っていた。連続殺人をする大胆さがある一方で、自信のなさがうかがえる。

白石被告の裁判が行われている東京地裁立川支部 ©渋井哲也

 加えて、「返済の話は何も出ていません。(もし、他の男性のところへ行った場合)返済を求められた後、部屋に1対1という状況にならないだろうと。Aさんは外に出て、生活し、連絡だけをよこす状態が望ましくないだろうと考えるはず。それを防ぐために殺したんです。殺害してもバレなければいいと思った」と証言する。何も確認もしていなければ、論理的ではない。殺害する計画性ははっきりあったわけではないのだろう。

 Bさん(当時15、女性)は、白石被告と話をしているうちに、「生きたい」と思うようになる。ただ、Bさんの家出願望を利用して、失踪に見せかけるため、「片瀬江ノ島駅に行って、海に携帯電話を捨てるように」と指示したものの、白石被告はBさんの位置情報を確認していない。アプリで確認しようと思えばできたはずだ。結果、Bさんは携帯電話を駅のトイレ内に放置したことで、清掃員が拾得物として駅に届けている。バレない自信があったというが、最終的な確認をしていない。

わかったような、わからないような論理

 弁護人は、「Aさん、Bさんの殺害が腑に落ちない。傷害や暴力の前科がない白石さんがいきなり殺害する。殺害を頼まれたのでは?」と問いただした。白石被告はこう答えた。

「(職業安定法違反で)執行猶予中でした。次、逮捕されれば、実刑になると思っていました。そのため、レイプして、お金をうばって、殺害しないといけないと思ったんです」

事件現場 ©文藝春秋

 わかったような、わからないような論理だ。執行猶予中で次に何か犯罪を犯したら、実刑になるのはわかる。だからといって、殺人までするのか。このあたりの心理は、常人にはわからない。白石被告にとっては、実刑となるならば、死刑と同じだと思ったのだろうか。

 Cさん(当時20、男性)の殺害は、Cさんを紹介したAさん殺害の証拠を隠滅するためだった。殺害当日の8月29日、白石被告はCさんと相武台前駅で待ち合わせた。Cさんには、失恋と仕事のプレッシャー、バンド仲間との関係が悪化したことなどの悩みがあり、白石被告に一方的に話したという。白石被告は、自殺させようとしていたにもかかわらず、「前向きになるアドバイス」をして、Cさんは「死ぬのをやめる」と言い出すことになる。ある意味では、“人間的”な側面である。

z