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「強さのインフレ」を味方につけた

 魅力的なのは、ポップだけではありません。最初は邪(よこしま)な心を持つハドラーも心を入れ替えて、ライバルとしてダイを苦しめますし、ポップの師・マトリフも含蓄のある言葉をつぶやきます。魔族なのにダイに肩入れする武器職人のロン・ベルク。そしてアバンも最後の戦いでは、大活躍します。

 またキャラの演出、ストーリーとの組み合わせの妙もあります。作中では最強クラスのバランがハドラーの配下になった理由、大魔王バーンが世界を征服する理由も語られています。アバンが勇者だった時代の話も随所に出ています。マァムとポップらの“四角関係”もあったり、ラブコメ要素も入っていますね。

 終盤になると、序盤のことがすっかり忘れ去られる作品は珍しくありませんが、ダイの大冒険は違います。ダイがレオナ姫からもらう「パプニカのナイフ」は、本編の終盤でも出てきますし、ニセ勇者パーティーは、何と大魔王との戦いにも登場します。

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 またバトルマンガでは、どんどん強くなる「強さのインフレ」は、マイナスのイメージでとらえられることが多いのですが、ダイの大冒険では関係ありません。RPGなので、経験値を積んで飛躍的に強くなるのは自然なことですね。六大団長を倒すごとに、ダイや仲間が強くなるのが明確に分かりますし、むしろ「インフレ」がないと困るわけです。

 作中でマァムが「僧侶戦士」から「武闘家」に転職しますが、ゲームではおなじみのシステムです。必殺技「ギガブレイク」、最強魔法「メドローア」は、誕生当初はマンガオリジナルでしたが、ゲームに“逆輸入”されています。「ダイの剣」も、剣が意思を持っていて、弱い相手だとさやが抜けず、ダイが死ぬと剣も死ぬという設定になっています。この設定は、作中でもきっちり生かされていて、非常に考えられていることが分かります。

 要するに「ドラクエ」頼みのように見えますが、「ドラクエ」に縛られることはなくむしろ利用して、一段上のコンテンツに仕上げた感じなのです。連載当時は「ダイの大冒険は、どうしてゲーム化されないのだろう」と思ったほどでした。

25年前のコンテンツがまた花開こうとしている

 そう思っていただけに、再度のアニメ化に加え、三つのゲームが発表されたことは、25年越しの希望がかなったようで驚きでした。

10月22日からスタートするアーケードゲーム「ドラゴンクエスト ダイの大冒険 クロスブレイド」

 まず対戦カードアーケードゲーム「ドラゴンクエスト ダイの大冒険 クロスブレイド」が10月22日にスタートします。続いて、スマートフォン用ゲーム「ドラゴンクエスト ダイの大冒険 ‐魂の絆‐」、家庭用ゲーム機用ソフト「インフィニティ ストラッシュ ドラゴンクエスト ダイの大冒険」(対応ゲーム機未定)がいずれも来年に配信・発売予定です。

 なおゲームだけでなく、マンガアプリ「少年ジャンプ+」で現在、マンガ「ダイの大冒険」が公開されています。そして、ダイの師・アバンの若き日を描いたスピンオフマンガ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王」の連載がVジャンプ(集英社)で始まるなどの力の入れようです。

 25年ぶりに復活した「ダイの大冒険」ですが、予想以上の大きな展開を見せています。四半世紀前にクローズしたコンテンツの活用方法として、ビジネスの面から見ても興味深く、今後の展開にも注目です。