文春オンライン

「なぜ私が人殺しの差別者といっしょに…」杉田水脈が泣きながら電話をしてきた日

『保守とネトウヨの近現代史』より #2

2020/10/27
note

「して欲しい話があるのですが……」

 騒動が終わった11月の話である。とある杉田が理事を務める会で、私は講演をすることになった。この年は明治維新150年であり、ちょうど『明治天皇の世界史』(PHP研究所)を発刊したこともあり、著書の題名を講演のタイトルにしてもらっていた。その時の、開始前の立ち話である。

杉田「先生、今日は何の話をされますか?」

倉山「明治天皇の話ですが……」

ADVERTISEMENT

杉田「私の話はしますか?」

倉山「あえて、しないつもりですが……」

杉田「ぜひ、して欲しい話があるのですが……」

 そして明治天皇と何の関係もなく、講演冒頭で大意以下のスピーチを行った。

©iStock.com

「ここに居る皆さんは一人残らず、杉田さんを応援している人と思います。今年は受難の年でした。最後は世界中から十字砲火を浴びました。かつて悪い人と付きあっていた報いを受けた部分もあります。一方で、不当な攻撃を受けた面もあります。人間のやることに百点も零点もありません。皆さん、言いたいこともあるでしょう。

 しかし、ここでLGBT問題の是非を言うこと自体が、政治を知らぬ者の言です。

 私は日ごろは保守のクセに自民党を批判している人間だと言われていますが、その私が自民党の長所を申し上げます。自民党は何をやっても、三回連続小選挙区で当選すれば実力勝負です。一方、比例で当選した人、特に比例優遇で当選した人には発言権が無いのが、自民党のルールです。今回の杉田さんの最大の落ち度は、比例優遇で当選しながら言論の自由を行使したことです。LGBT問題で杉田さんが正しかったとか間違っていたとかが問題ではありません。本当に言いたいことやりたいことは、小選挙区で三回当選してからにすべき、これが自民党の掟なのです」

無垢な「保守」と「ネトウヨ」

 ここで、「杉田の主張は間違っている」などと説得して通じるはずがない。応援するなら、せめて自民党のルールを知ろうと呼びかけただけだ。それが良いとは思わないが、現実だ。それどころか、比例の候補で選挙区ももらえていない杉田は、政治生命の危機ではないか。

 これを15分かけて丁寧に説明したが、観客の反応は「杉田さん、間違ったこと言っていないのになあ」だった。

「保守」「ネトウヨ」とは、無垢な人たちなのである。

「なぜ私が人殺しの差別者といっしょに…」杉田水脈が泣きながら電話をしてきた日

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー