――「強いね」と言われることはないですか。
永作 そんなふうに私のことを誰もほめてくれないです(笑)。佐都子については、台本を読んだとき、ずいぶんしっかりした女性だと思いました。
そこで、一見、なんでもよくできる優秀な人物が、実はまだまだ成熟していなくて、様々なことを体験して揺れながらようやく成熟の域に達する、その過程を演じるにはどうしたらいいだろうと。結婚前は仕事のできる女性だったのが、結婚してからはきちんと揺れて、きちんと悩んで、きちんと崩れるところを見せたかったんです。
――永作さん自身がそういうふうに悩んで、成熟の域に達した体験はありますか。
永作 成熟にはなかなか届きません。今はただ毎日必死なだけです。でもきっと、納得いくときがあると思うんですよね。ないこともあるのかもしれませんけれど……。たとえなかったとしても、寿命が来たとき、私の人生、「ああ気持ちよかった!」と思って死ねたらいいですよね。
「本当に50年も生きたの?」と不思議な感じ
――10月14日に50歳になられます。
永作 めでたくなります。
――見えないと言われることが多いと思いますが。
永作 大丈夫です。見えています、ちゃんと(笑)。
――50代になるってことを考えますか。
永作 うーん……考えないです。自分が50年生きてきたことはもちろん認めますけれど、それで自分がどれだけ変わったかわかりません。むしろ「本当に50年も生きたの?」と不思議な感じがしています。いまだに何をやっても「知らなかった!」と驚くことがいっぱいあって、50歳生きても成熟したとはまったく思えないです。
それに、皆さん、自分の年齢について考えます? 毎日、忙しすぎて、そんなこと考えていられなくないですか(笑)。
少なくとも私は、やることがたくさんあり過ぎていつも気がついたら夜になっているんですよ。そして「ああ、よかった。今日も何もなく終わった」とホッとして寝る。今はその喜びのために生きています。
――今日できなかったから明日にしちゃえ、というのはありますか。
永作 いっぱいあります。できないときはすぐ諦めます。自分にこれ以上負担をかけたくないですから(笑)。1日24時間、時間は決まっているもので、無理なものは無理。ただ、後で「これができたけれど、これはできなかった」とモヤモヤしたくないので、いちおう優先順位はある程度つけます。寝るときに「明日まず一番にこれをやろう」と予定しておくなど、心がけていることはそれぐらいですね。