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――優先順位の一番は。

永作 なんだろう?(笑)。ざっくり「ごはんを作る」ことがとにかくメインですね。私、やっぱりごはんって生きるうえで重要だと思うんです。親に対しても「ここまでごはん食べさせて育ててくれてありがとう」と心から思っています。

――3食ごはんをきちっと作ってくれたご家庭に育ったのですね。

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永作 割と早いうちから私が作っていましたけれどね。毎日の生活のなかで、「ごはんを作らなければならない」という一本柱があるかないかで全然生活は違ってきますよ。

 

 ごはんを作らなくてよかったら、いつ何をしてもいいし、どんな時間に寝てもいいけれど、「必ずごはんを作らなければならない」となると、ある程度、規則正しくする必要がありますから、人間はごはんによって大きく生活が左右されると思います。

――もしその支柱がなくなったら永作さんはどんな芝居をするようになるのか。

永作 指針がなくなって、ムチャクチャな芝居をするかもしれないですね。でも、私、こう見えて、傍から見て意味がわからないと思われるような、ふらふらした人の役を演じることが大好きなんです。なんでもできて完璧な人物は振り幅が少ないですが、できないこともあって決して完璧でない役は自由で楽しいですよ。

 とはいえ、これからの私がどんな役を演じていくかは、神のみぞ知るですけれど(笑)。

 

みんなが社会に対してなんとなく感じていることを、芝居で伝えたい

――『朝が来る』では特別養子縁組制度という社会問題が提示されましたが、社会的な問題を扱う作品にご興味はありますか。

永作 10年ぐらい前、私は特別養子縁組を扱った番組のナレーションをしたことがあって、今回、またご縁があるなあと感慨深く思いました。社会の中でこういう活動をしている方々がいることを知ってもらえたらと当時も思いましたし、今回も改めて感じました。こういった作品に参加する意義を感じますし、俳優という仕事は、なにかを伝えていかなくてはいけない職業だと思っています。

 とりわけ、今年、コロナ禍が起って、これまでと生活が変わろうとしているのか、変わらなければならないのか、どちらなのかわからないけれど、そういう状況の中、何かを発信したいと思う人が増えてきているような気がします。

 そういうとき、私たちの職業は、虚構の表現の中で優しく伝えることができる。それが社会貢献になればいいですし、みんなが社会に対してなんとなく感じていることをお芝居に仕立てて伝える、そんな作品がどんどん生まれてきたらいいなとも思います。

 

写真=三宅史郎/文藝春秋

INFORMATION

『朝が来る』
監督・脚本・撮影:
河瀨直美
原作:辻村深月
出演:永作博美 井浦新 蒔田彩珠 浅田美代子 ほか
http://asagakuru-movie.jp/

朝が来る (文春文庫)

深月, 辻村

文藝春秋

2018年9月4日 発売