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――素晴らしい調整力ですね。

永作 全然素晴らしい話ではなく、要望どおりにできなくてごめんなさいという話なのに?(笑)

――コトを荒立てない範囲で自分にも負荷をかけ過ぎないことは大事だと思います。『朝が来る』で監督にそっと「ごめんなさい」したところはありますか。

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永作 今回の“役積み”に関しては、やればやるほどそこの大切さを感じ、なるべくミッションを遂行したいと思っていました。唯一、お断りしたのは、栃木にデートに行ったときです。監督に「井浦さんとふたりで温泉に泊まらない?」と提案されて、「ちょっと難しいです」と。

 井浦さんが「明日、朝から子供の学校行かないといけないんだよね」と言うから「じゃあ泊まれないね。私も帰らなきゃいけないしなあ」とこれもふたりで相談して決めました。

 

監督が感じた、井浦新との“上下関係”

――そもそも俳優が当人と全く違う人になれるのかということは興味深いです。

永作 それはかつて「自分は役者に向いてないんじゃないか」と思ったきっかけでもありました。20代後半から30代前半くらいでしょうか、自分とまったく違う人物を演じることができるものだろうかと悩んでしまって。

 そのときにある名女優の言葉を読んで「役だけど私」「私だけど役」でいいのだと確信して、以降はあまり迷わなくなりました。

――今回の佐都子という役は、次々と大変な体験をしながら、最終的に受け入れる度量と精神的強さを感じました。そこには永作さんらしさも入っていると考えて良いのでしょうか。

永作 年齢に限らず、なにかあったとき、やっぱり女性は強いと思います。

――女性が強いという一般論になるのか、演じている永作さんの強さなのか……。

永作 自分のことはあまりよくわからないですけれど(笑)。原作では夫の年齢が上で、妻の佐都子のほうが少し下という設定でしたが、撮影が始まる前の私たちの様子を見ていた監督が年齢設定を逆にしたんです。

 

 どうやら、私たちのやりとりに明らかな上下関係を感じたらしく(笑)。実際、井浦さんは年下だということもあって、そのほうが監督の求めているリアルに近づけると考えられたのでしょうね。