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ゴーストタウンと化した夜の街

 竹の塚にはフィリピンパブがおよそ50店舗軒を連ね、別名「リトル・マニラ」という。東武スカイツリーライン竹ノ塚駅の側には「開かずの踏切」と呼ばれる、時には5分ほど待たされる踏切があるのだが、そこから東に延びる道路の両側に歓楽街が広がり、夜になると仕事帰りのサラリーマンたちでごった返す。

フィリピンパブの看板が連なる竹の塚の街並み

 足立区には今年1月現在、フィリピン人約3700人が住み、都内で最も多い。竹の塚にパブが集中していること、区内に低家賃の団地が多いという立地条件などがその要因とみられる。

 コロナの感染拡大に伴い、全国各地のフィリピンパブでクラスターの発生が相次いだ。愛知県蒲郡市のフィリピンパブでは3月上旬、「コロナばらまき男」が入店して店の従業員に感染させ、メディアでも話題になった。

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 ここ竹の塚でも7月中旬にクラスターが発生した。区によると、フィリピンパブの2店舗で発生し、感染者は約30人。以降、店の休業が相次ぎ、人通りが少なくなったことから、街はゴーストタウンと化した。

 カリンも他店と同様、しばらくの休業を余儀なくされた。店はすでに、緊急事態宣言以降、4~6月までの3カ月間休業し、7月から再開したばかりだった。カウンターのパーティション越しに、アニーが語る。

「クラスターの後は、常連のお客さんから電話があった時だけ、週1回ぐらいのペースでやっていました。今は常連さんしか入れていません。体温を測って、37℃だったら『もう1回測って!』って。体温計も結構いい値段するんだよ。8000いくらだから」

壁にはドゥテルテ大統領の写真が飾られていた

 店の従業員は、区の指示に基づいて全員PCR検査を受け、いずれも陰性だった。本格的に営業を再開したのは9月半ば。以前は夜間に営業していたが、それほど儲かっていなかったことからコロナを機に夜間は中止。現在は午前6時から午後6時までの時間帯に切り替えた。

「お店の女の子も減っちゃった。コロナになってから店に出てくるのも怖いみたいで。特に子供がいる女の子はね。前は18人いましたが、今は半分。店に出られる子も1日に2〜3人しかいないの。ほかはみんなホテルのベッドメイキングとか。1人でやるから安心でしょ? あとは弁当工場とかのお昼の仕事」

 周囲のママたちもコロナ関連の情報には敏感なようで、アニーのところにも電話が掛かってくる。

「あそこのお店は救急車が入ったらしいから近づかないで、とか、どこどこのお店の女の子が入院しらしいよ、検査したらしいよ、とかいう情報が入ってくる。でも竹の塚がニュースになってからは、そういう話は聞かない。だっていじめられるもん」