アニメ化、放送途中での休載……堀越プロデューサーが見た、まつもと泉
アニメ『オレンジ☆ロード』のプロデューサーで、元日本テレビ社員の堀越徹さんは「当時の[週刊少年ジャンプ]の編集方針は“友情・努力・勝利”でしたが、『オレンジ☆ロード』はおよそ[ジャンプ]らしくない恋愛マンガでした。私は原作のファンでしたので、ぜひテレビアニメ化したいと集英社さんにお願いしました。念願かなってアニメ化権をいただき、内容については私たちに任せてくださいました。1話完結ですので、話を増やしたり、他のエピソードとくっつけたり、思い切った展開もありましたが、先生はいつも温かく見守ってくださいました」と、当時を振り返る。
まつもとさんは放送終了後も、シリーズ構成の寺田憲史さんや、高田明美さんともお仕事をし、堀越さんもみなさんと何度か食事をともにされたという。「先生のご両親もアニメ化を大変喜んでくださいました。先生にとって思い出深いアニメだったと信じています。毎年、心のこもった年賀状をいただいていました」とのことなので、実際このアニメ化は原作者としても会心の作だったようだ。
だが、放送途中で連載は2度目の休載を迎えることに。アニメの人気が上がってきた時期だったので、堀越さんも「これはえらいことになった……」と、真っ暗な気持ちになったという。「当時、先生のご病気は医学的に証明されていませんでした。誰もが“漫画家さんは怠け者”だと思っていたのです」という堀越さんの言葉は重い。15年ほど前、まつもとさんから堀越さんへ、自身の病名が判明し、現在療養中で、日テレのニュース取材も入っているとの報告のお電話があったという。「怠け者だなんて、大変失礼だったと、深く反省しました」という堀越さんの慚愧の念は、周囲の理解なき中で孤独な闘病を続ける患者の方、すべてに向けられた懺悔だろう。
「訃報は集英社の知人から聞きました。ご葬儀はご家族のみで執り行うとのこと。お別れできなかったことが残念です。『オレンジ☆ロード』は私にとって忘れられない作品です。まつもと先生とご一緒できたことを神様に感謝しています」と、堀越さんは締め括られた。
訃報につきものの月並みな言葉ではあるが、作品は永遠に不滅だ。まつもと先生の新作が読めなくなったことは残念だが、今ある作品を繰り返し読んで思い出すことも人の世では大切なことだと思う。
まつもと先生、ありがとうございました。作品を繰り返し読み返して、先生の想いを後世に伝えていきます。