鮎川まどかに春日くるみ……作中のヒロイン達にドキドキさせられた
単なる思い出話になってしまうが、筆者は原作以上にテレビアニメ版の『きまぐれオレンジ☆ロード』が大好きで、当時βで全話録画した。『巨人の星』(’68年)の星飛雄馬から『機動戦士ガンダム』(’79年)のアムロ・レイを演じて声優としての幅を拡げていった古谷徹さんが、超能力者の主人公・春日恭介を演じ、アムロとはまたひと味違う“ナイーブな異能の少年”を好演された。原作にもあるエピソードで、ひょんなことから催眠術にかかった恭介が、ヒロイン(というかもうひとりの主人公)で恋心を抱く美少女・鮎川まどか(声・鶴ひろみ)にいつになく積極的に迫り、あわや……という展開などに毎回ドキドキしてしまったものだ。
アニメーションでキャラクターデザインを担当した高田明美さんは、やはりアニメ版の『機動警察パトレイバー』シリーズ(’88年)のキャラクターデザイナーとしても知られており、高田さんがポスター等で描かれた鮎川まどかのヴィジュアルは、まつもとさんの絵とはまた異なる魅力に溢れていて、『オレンジ☆ロード』を思い出す際、決まって脳裏をよぎる。
恭介には双子の妹があり、末妹のくるみを演じた本多知恵子さんは、プライベートもくるみちゃんのような、ちゃっかり屋さんっぽい素敵な方で、このくるみ役を自分の分身のように非常に大切にされていた。その本多さんも、鶴ひろみさんももう、この世にいないと思うとまた、悲しくなってくる。まつもとさんといい、どうしてこう……と、思っても仕方のないことをつい考えてしまう。
『オレンジ☆ロード』の実写企画を持ち込んだ思い出
じつは筆者は、『オレンジ☆ロード』の実写化企画をまつもとさんにご相談したことがあり、知人の編集担当の紹介でご自宅まで伺った。まつもとさんは、春日恭介を思わせる繊細そうな方で、時折はにかむように浮かべる笑顔が素敵だった。もちろんご自宅は洋風のオシャレなたたずまいで、よくある漫画家特有のゴシャゴシャ感などは微塵もなかった。
お会いした際もそうだったが、幼少期の交通事故が原因で患った持病で、体調は芳しくなさそうだった。このご病気(脳脊髄液減少症)でさぞやご苦労されたことと思う。結局、肝心の鮎川まどか役が見つからずに企画は流れてしまったのだが、映画が万が一、いろいろな意味で“失敗”してしまったときのことを考えると、これはこれで良かったのかもしれない。今にして思えば、鮎川まどかは原作と、アニメの鶴さんの声のまどかが“最高”なのだから。