筒美京平は「君はどれだけ明るく振る舞っても、寂しげだから」
俳優の仕事を通じて、他人とものをつくることの楽しさを覚えるようになった。現場では監督の仕事ぶりから、作品の全体像を捉えてつくるということを学んだという。この間しばらくアルバムをリリースしない時期があったが、俳優業の充実は音楽活動への本格復帰にもつながった。それまで曲も自作してきたのが、このころから他人とも積極的にコラボレーションしていくようになる。きっかけとなったのは2000年、シングル「パズルの欠片」で作曲家の筒美京平と組んだことだ。及川は洋楽好きとはいえ、世代的にルーツはやはり歌謡曲であり、そのなかでも筒美メロディは頭のなかに刷り込まれていた。
筒美が曲を書いてくれると決まったとき、及川は沖田浩之の「E気持」のような、華やかな曲になるのかと思っていた。しかし、上がってきたのは独特の陰影のあるメロディだった。及川によれば、筒美は対等に話し合うなかで、「低音域をちょっと生かそうよ」とか「君はどれだけ明るく振る舞っても、寂しげだから」などと、自分でも気づかなかったところまで見抜いてくれたという(※4)。楽曲もそのうえでつくられたものであった。この曲に及川が詞をつけ、80年代のニュー・ロマンティック調にアレンジして完成させた。筒美からはその後、約2年半ぶりのオリジナルアルバム『聖域~サンクチュアリ~』(2001年)にも「パズルの欠片」のほか2曲提供を受けている。
清志郎から学んだ「人が楽しむ姿が見たい」という姿勢
2002年に「ミツキヨ」というユニットを組んだ忌野清志郎との出会いも大きかった。若いころは「なめられたくない」と虚勢を張っていたところもあり、影響を受けた文学や哲学の要素を何とかファンクミュージックやロックに載せて伝えようとしていた。しかし清志郎との出会いを機に、お客さんが笑顔になってくれるものをつくりたいと意識が変わっていったという(※5)。
インタビューで「ミュージシャンと俳優、どちらが本業?」と訊か