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今後は中年の哀愁を漂わせる路線も?

 俳優としてシリアスな役もこなしながら、コンサートではデビュー時から変わらず「ミッチー」という“着ぐるみ”を身にまとい、歌って踊れるエンターテイナーとして振る舞う。週刊誌で『機動戦士ガンダム』のキャラクター、ガルマ・ザビの軍服に身を包んで登場したこともあったが(※6)、当時すでに40代半ばだったにもかかわらず、まるで違和感がなかった。現実と虚構のあいだを自由に行き交い、シリアスからコメディまで幅広くこなせることこそ、及川の真骨頂だ。

2006年には映画『大奥』に出演 @文藝春秋
ヒュー・グラントが主演した『ラブソングができるまで』

 そんな彼は、すでに7年前の時点で、これからミッチーが老いていく姿を演出するべく、ひとつの腹案を描いていた。モデルとしたのは、ハリウッドの二枚目スター、ヒュー・グラントが40代後半で主演した『ラブソングができるまで』(2007年)という映画だ。《ポップアイドルだった男が、20年経っておっさんになった。カラオケ1曲歌うだけでハーハー息切れしながら、デパートの屋上で営業している。でも、実は才能があって最後は名曲を発表する》その物語に、及川は《お、これミッチーにぴったりじゃん!》と思ったという(※1)。

 筒美京平が「君はどれだけ明るく振る舞っても、寂しげだから」と見抜いたところに円熟味を加え、今後は中年の哀愁を漂わせる路線もあるのか。そんなミッチーも見てみたい気がする。

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※1 『週刊現代』2013年11月16日号
※2 『現代思想』2016年8月臨時増刊号
※3 『婦人公論』2001年9月7日号
※4 『ミッチーcast 【1996-2015】~及川光博 20th Anniversary Edition』(ジョイフルタウン、2015年)
※5 『an・an』2015年4月8日号
※6 『週刊朝日』2016年5月27日号