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家族への感染を恐れて帰省もできなかった

「それに比べれば、大学生はただ大学に行けないだけで大した影響は受けていないだろうと思われがちです。むしろ部活や飲み会でクラスターが発生したことを伝える報道によって注目されることの方が多いかもしれません。

 しかし大半の学生は真面目で、外出自粛、大学キャンパスへの入構禁止などの措置に素直に従っています。秋田県では6月19日に県外移動自粛措置が解かれましたが、それでも学生はほぼ全員、少なくとも夏休みまで実家に帰りませんでした。地元で親や祖父母に感染させてしまうことを心配したのです。その結果、学生たちの孤立する状況が長く続きました。

 人は孤立して、家族や知人などコミュニティからのサポートも得られないと、健康状態、精神状態が悪化する。これは先行研究で明らかにされている既知の事実ですが、私たちの調査でも、同じ傾向が浮き彫りになっています」

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©iStock.com

 秋冬になり、新型コロナの第三波が日本を襲う可能性もある。そうしたときにようやく対面授業が再開された大学がふたたび登校禁止へと舵を切るかもしれない。

 しかし、野村教授はオンライン授業へと戻ることに警鐘を鳴らす。

大人のリモートワークとはわけが違う

「大学生は中途半端に大人なので管理が難しいという面はあると思います。だから、全国で大学は一律オンライン授業という風潮になったのでしょう。しかし、その弊害はあまりに大きかった。特に、学生の半数以上が他県出身の地方の大学ではしかりです。大人がリモートワークをしているのとはわけが違います。

 18、19歳はまだまだ子供で、ガラス細工のように脆いのです。

 大人であればもう少し自分で動けたかもしれません。子供であればもう少し守ってもらえたでしょう。不幸にも大人と子供の間という微妙な年齢である大学生が最も厳しい状況に置かれてしまった。大学では、われわれ教員が経験したことのない事態が密かに進行し、1割もの学生がうつ状態に陥ってしまったのです。

 今後も何とか工夫をして対面授業を続けてほしいと考えています」

出典:「文藝春秋」11月号

 年齢、性別、飲酒、運動習慣、相談できる存在の有無などうつ状態をつくるリスク因子の分析に踏み込んだ野村教授によるアンケート調査の詳細、秋田大学で行われているうつ状態の学生へのサポート、友人の異変を感じたときに何をするべきか、など、コロナ禍での大学生のうつをめぐる実情をレポートした「大学生の1割が『うつ状態』になっている」は「文藝春秋」11月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

文藝春秋

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