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「相方がネタを書かないの、どう思ってる?」オードリーのトークが今、抜群におもしろい理由

『あちこちオードリー』がスゴい

2020/10/28
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これまでのトーク番組の構成と違うのは?

 たとえば『徹子の部屋』や『A-Studio』のような、ホストがゲストの芸能人について掘り下げ、インタビューしていくトーク番組はこれまでもあった。『徹子の部屋』では、ホストの黒柳徹子さんがゲストの家族や生い立ち、デビューのきっかけなどについて質問していくさまが番組になっている。

 バラエティの中でもトーク番組というものは、ふだん知ることのできない芸能人のプライベートや、仕事の話といっても経歴を中心に掘り下げるのが、一般的だったのかもしれない。 

 しかし『あちこちオードリー』は、ゲストのプライベートや経歴よりも、どちらかというと、彼らの「仕事のやりかた」に重きを置いて話題を展開する。

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オードリーの若林正恭 ©文藝春秋

 トーク番組だけど、オードリーとゲストの芸人やタレントが語るのは、いわゆる、ぶっちゃけた仕事論。――そこが今までのトーク番組と一線を画するところで、また、見ていて新鮮に面白いな、なんだかもっと聞きたいな、と感じる理由になっている。 

略歴でもプライベートでもない、「舞台の裏側」の感情が聞ける

 雑誌のインタビューで、俳優が演劇論を語ったり、芸人が漫才論を語ったりすることはあるけれども、「どうやってバラエティ番組でいまの人気を獲得したのか」「狙って今のポジションに就いたのか、それともなりゆきだったのか」「これからやっていきたいことはあるのか」など、バラエティで活躍する芸能人の戦略や野心といった「舞台裏の設計」を視聴者が聞くことはあまり、ない。 

 しかも、オードリーという芸能界で長く活躍しているコンビが興味をもって話を投げかけるからこそ、芸人やタレントが、舞台の裏でどうやって自分を設計してきたのか、という話を聞けたりもする。

オードリーの春日俊彰 ©getty

 たとえば「ぶっちゃけ、コンビで売れたけど片方はネタを書いていないことに対してどう思っているのか」「バラエティの収録が終わった後、一人で反省会をして苦しくなるタイプなの?」「今でさえこんなに忙しいのに、40歳になってもまだ自分たちは頑張らなきゃいけないんですか……」といった、舞台上の略歴でも舞台にいない時の話でもない、舞台の裏側の感情を聞くことができるのだ。 

 もちろん仕事の話だけでなく、ゲストのプライベートについて掘り下げることもある。だけどそれもまた、オードリーの興味に沿って聞いているから、なんだか無理がなくて見ていて心地がいいな、と感じたりもする。 

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