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仏メディアも「なぜもっと抗議しないの?」学術会議問題、菅首相が“逃げ切れる”理由

2020/10/29

「手詰まりですね……」

 菅首相が日本学術会議の新会員候補6人を任命拒否した問題を取材している記者の1人は、こう漏らした。

 日本の科学者を代表する首相所轄の特別機関として設立され、210人の会員を中心に提言や答申を行っている日本学術会議。

 日本学術会議法の第3条で「独立して職務を行う」と保障され、会員は、学術会議が候補者を選考して内閣総理大臣に推薦し、総理が任命すると規定されている(7条2項と17条)。

©AFLO

「菅首相はヒトラー以上の独裁者」

 1983年、「総理の任命は形式的」という政府見解が出され、首相が任命を拒否したことはこれまで無かった。

 今回、初めての任命拒否に対して実に480の学会が反対声明を出し(10月23日時点)、学問の自由を保障した憲法23条に反すると猛反発している。

 10月23日、任命を拒否された当の研究者達が日本外国特派員協会で会見を開いた。

 東大の加藤陽子教授(日本近現代史)は欠席したが声明を寄せ、「法解釈の変更なしには行えない違法な決定を、菅総理大臣がなぜ行ったのか、意思決定の背景を説明できる決裁文書があるのか政府側に尋ねてみたい」と記した。

加藤陽子教授 ©文藝春秋

 会見に出席した早大院の岡田正則教授(行政法)は、「学術会議の独立性を侵害するもので、任命拒否は破壊行為であり、憲法23条に違反」と主張。また、首相の任命は形式的という政府見解を根拠に、「(日本学術会議法にも)違反している」と続けた。

 会見では、「菅首相はヒトラー以上の独裁者」という声まで出た。

 政府は軍事研究の推進を目指しているが、学術会議は軍事研究への協力を拒否する声明を1950年、67年、2017年と繰り返し出してきた。今回、政府は、安倍政権下の安保法制・共謀罪・秘密保護法に反対した人文社会系の研究者を狙い撃ちして任命を拒否し、さらに学術会議のあり方にまで踏み込もうとしている。

 政府は、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利」と定める憲法15条を根拠に、国民の負託を受けた国会議員の中から選ばれた内閣が公務員の任命を拒否することは合法、としている。