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「違憲」「違法」を裁判に訴えるまでに至らないのはなぜか

 立命館大の松宮孝明教授(刑事法)は、「(菅首相が)どのような公務員でも、自由に選び、または選ばないことができると宣言したものであり、怖ろしい話です。ヒトラーでさえ独裁を行うに当たって特別立法を必要としたのに、菅首相は憲法を読み替えて独裁を進めようとしている」と強調した。

 こうして当事者のみならず、多くの学会や研究者が任命拒否は「違憲」「違法」と主張している。しかし裁判に訴えるまでに至らない。なぜなのか。

菅義偉首相 ©文藝春秋

 10月14日、任命拒否に反対する憲法研究者の有志5人が衆議員第二議員会館で会見を開いた。

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 この時出した声明には憲法研究者138人が賛同。賛同者の数は、沖縄の辺野古基地問題の124人、愛知トリエンナーレ問題の91人、新型コロナ特措法問題の63人に比べて多い、と強調した。

 しかし声明では、「(任命拒否は)憲法23条の趣旨を十分にふまえておらず……」と弱く、「憲法に反する」と明確に打ち出すことは無かった。

「賛同者を多く集めたいという気持ちもあるし……」

 会見でこの曖昧さを問われた稲正樹・元国際基督教大学教授(憲法学)は、「確かにボヤッとしています。賛同者を多く集めたいという気持ちもあるし、(任命拒否を憲法違反に)繋げるロジックは大変なので……」と濁し、「出席者の気持ちはこれまで述べた(違憲・違法の主張の)通りです」と付け加えた。

 質疑応答で、『報道特集』(TBS)キャスターの金平茂紀氏が、「今後の行動として、提訴は?」と聞くと、東亜大院の根森健・特任教授(憲法学)は、裁判の原告になるためには具体的侵害が必要だが、憲法研究者の立場としては「具体的侵害が(無い)……」と回答。

 金平氏が「(拒否されたという具体的侵害があるため)任命を拒否された6人は原告になれるのでは?」と聞くと「6人は提訴できるかもしれませんが……」、金平氏が「学術会議(が原告になるの)は?」と続けると、「具体的な侵害があるか……」と煮え切らず、金平氏が「学術会議が一番被害を受けているでしょ!」と声を大きくした。しかし5人の憲法研究者から言葉は出なかった。