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“ウイスキー屋のおやじ”のプライド
また、彼はファン開拓とあらば試飲会や洋酒ファンの集いなどで、惜しむことなく逸品をふるまう。おかげで前述した1億円のモルトシリーズも手元に残っていない。
「規模ではとても大手メーカーにはかなわないけれど、品質では絶対に譲れない。私は“ウイスキー屋のオヤジ”でしかないけれど、うまい酒をつくっているというプライドをもって独立独歩を貫いていきます」
数年前まで、日本にはベンチャーウイスキー社を含め洋酒メーカーは8つしか存在しなかった。それが、ブームをうけ設立計画もあわせれば40近い蒸溜所が乱立しつつある。だが、肥土はひしめくライバルを尻目にこういってのけた。
「夢とロマンをもって、品質重視で参入してくる仲間は大歓迎です。だけど短期的視野と利益追求の蒸溜所は論外」
2023年は日本のウイスキー誕生100年を迎える。
「私もメモリアルイヤーにふさわしい、うまい酒を世に問おうと準備しています」
彼の視線は常に未来をみつめている。
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ゼロからウイスキー作りを始めたにもかかわらず、なぜ肥土伊知郎はわずか数年で世界的な評価を得ることができたのか? 肥土のウイスキー作りにこめた想いと、周囲を巻き込む静かな情熱に迫る「令和の開拓者たち 肥土伊知郎」は「文藝春秋」11月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
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肥土伊知郎(ベンチャーウイスキー社長)
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