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Aマッソ加納愛子「“お笑い番組が少ない”は言い訳にしかならない時代がきた」

『イルカも泳ぐわい。』より

2020/11/17

source : 文藝春秋 digital

genre : エンタメ, 芸能, 読書, ライフスタイル

 2010年に結成したお笑いコンビ「Aマッソ」でネタ作りを担当する加納愛子さん。11月18日、芸歴10年で出版する初めての著作『イルカも泳ぐわい。』(筑摩書房)から、エッセイ「売れたら、どの番組に出たいですか?」(初出:2018年10月24日)を特別に公開します。

加納愛子さん ©大村祐里子

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テレビや芸能界に対して抱く感情

 芸人になってもうすぐ10年が経とうとしているが、テレビや芸能界に対して抱く感情が、小さい頃も今もさほど変わっていないな、とふと考えた。そしてこの自己認識には、多少の気持ち悪さが伴った。それは、そんなはずはないと思うからである。しかし、数少ない番組出演の中で得られたものがほとんどと言っていいほど手の中に残っておらず、現在もアプローチの糸口を掴んでいるようないないような、少し首をかしげたように過ごしているといった頼りないこの状態が、かつて思い描いていたものとの違和感を、いまの自分にどうやら感じさせていないようである。

YouTube「Aマッソ公式チャンネル」で動画を配信中(提供:ワタナベエンターテインメント)

 テレビの世界には面白い人や綺麗な人がわんさかいて華やかだが、その一方で仕事は仕事。その場で求められる能力が高い人が偉い。莫大なお金も動く。黒い部分も少なからずあるだろうけど、そんなことはもちろん周知の事実。売れたらその時点でゴールなわけでもないし、栄枯盛衰、常に不動のものはない。面白い番組も視聴率が悪ければガンガン終わる。こう書いてみると、さも私が昔からテレビになんの理想も持たずに冷静に見ていたように思える。そうではない。「目が悪くなるから離れろ」と言われるくらい、文字通りかじりつくように見ていた日々は決して短くはなかった。では私は今まで、一体テレビの何を見ていたのだろうか。

「売れたら、どの番組に出たいですか?」にぶち当たる

 思い返せば、多くの場合それは「ライブ」だった。お客さんが入った状態での漫才番組やトーク番組、そしてそもそもが劇場の舞台で行われている新喜劇。ダイレクトに反応が返ってくることで、演者はお客さんからその瞬間瞬間に必ず「ウケ」というジャッジを下されていた。そのジャッジは他のどんな番組と比べても、とてもクリアでシンプルだ。そして、それを見ていた私を含むお調子者の中学生達は、友達(客)がいれば演者になれることを知った。そして、演者になることに夢中になる。毎日が彩られていくのを肌で感じた。そう、テレビは面白いし、何よりありがたいものだったのだ。いわば生きる上での楽しみ方を教えてもらっていたようなもので、「飛び込みたい場所」とは考えていなかった。芸人になりたいは、そんな休み時間をずっとしていたいと同義だったように思う。

Aマッソ2020年単独ライブ「モノッソ・カーカー」より(提供:ワタナベエンターテインメント)

 そんな具合であるものだから、芸人になって以来、オーディションや取材で何度も投げかけられて何度もぶち当たってしまう質問がある。

「売れたら、どの番組に出たいですか?」