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「負けました」の言えない韓国 米大統領選の陰で失われた“対日カード”とは

2020/11/09
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空転の末に失われた“対日カード”

 輸出規制をめぐる日本との対立がWTOを舞台として行われていることに目を向ければ、わずかな望みをつなぎ選挙戦の逆転勝利を目指すことは、韓国にとって一見利点があるようにもみえる。しかし、実際にはWTO空転のさらなる長期化に手を貸すことによって、逆に日本に対する外交カードを一枚失うことになるのだ。

 元徴用工問題に端を発し、半導体材料の対韓国輸出を規制した日本政府の対応を不当として、韓国は昨年9月、WTOに提訴。今年7月、二審制の「一審」に相当する小委員会の設置が承認された。しかし、最終審に相当する上級委員会はWTOへの不信感を募らせる米国の反対で欠員の補充ができず、機能不全に陥っている。

 ただでさえ時間のかかる紛争解決手続きは、韓国にとって本筋の解決策ではない。あくまでも日本に規制解除を促す一手段という位置づけにある。そうはいっても、手続きの停止状態が続けば「嫌がらせ」の効能は薄まる。

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あらゆる面で「実を捨てる」結果に

 一方、兪明希氏が組織トップに就任したとしても、当事者の一方を露骨にえこひいきできるものでもない。結局、事務局長選を長引かせることで失われるものの方が大きいといえる。

「期待以上の支持を得て最終決選に進んだだけでも、大きな外交的成果だと評価している」。今月5日、朝鮮日報は外交消息筋による戦いの総括を伝えるとともに、兪氏が近く選挙戦から撤退する意向を発表すると報じた。しかし、トランプ陣営からバイデン陣営への円滑な政権移行が絶望的な米国との調整には、相当の時間がかかる可能性も否定できない。

ファイティングポーズをとり続けるトランプ大統領を、韓国側はどういう心境で見ているのだろうか ©JMPA

「名を捨てて実を取る」という当初の目論見は外れ、韓国の選挙戦はあらゆる面で「実を捨てる」結果をもたらした。ファイティングポーズを取りつつも内心はさっさとリングを去りたいボクサーの立場から見れば、敗北がほぼ確実になってもひたすらに勝利を諦めないトランプ大統領の姿は、存外まぶしく映っているかもしれない。

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