『石川雄洋退団』のニュース。ベイスターズファンなら誰もが衝撃を受けましたよね。個人的にも、公私ともに大変可愛がってもらった先輩だけにショックはかなり大きかったです。

 私がベイスターズに入団したころ(2012年)の石川さんの印象は、ネームバリューやテレビで観るふてぶてしい態度からか、少し近寄りがたい存在でした。

 そんな石川さんのイメージががらりと変わったのが、2年目の春季キャンプでした。私は育成選手でありながら、この年初めての1軍スタート。周りは現2軍監督の三浦(大輔)さんや金城(龍彦)さん、多村(仁志)さんなど球界を代表する先輩たちばかり。同じチームとはいえ1年目を2軍で過ごした育成選手の私にとって、この顔ぶれは『1軍』に上がらなければ決して顔を合わせる事のない、特別な人たちでした。

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 大勢の記者やテレビカメラ、『1軍』という特別な環境とプレッシャーからか、中々溶け込めずにいた私に最初に声をかけてくれたのが、石川さんでした。

「西森、今日の夜予定ある? ごはん行こう! お前初めての1軍で友達いねぇだろ?」

 1歳しか変わらない先輩のこの言葉ですごく救われたことを今でも鮮明に覚えています。

 これは後から知ることになるのですが、移籍してきた選手や初めての環境で馴染めない選手がいると少しでも早くチームに馴染めるように積極的に声をかけているそうです。

©文藝春秋

意外とお茶目な『石川雄洋』

 数年前の春季キャンプのことでした。キャンプ初日前夜を同部屋で迎えた私と石川さん。明日から「始まる」という期待と、「始まってしまう」という不安からなのか、「西森、これ寝て起きたらキャンプ始まってしまうぞ」とウトウトしながら私に言い出したのです。そして「俺は絶対に寝ないぞ」なんて子供染みたことを言い出して、しかし少し経つと静かになった石川さん。なんだかんだ言いながら寝たのかと思っていると、いきなり“バッ”と飛び起き『俺は寝ないっ!!』。

1つ上の尊敬する先輩ですが、その時だけははっきりと言わせていただきました。「おもいっきり寝とったやないか」と。

 ですがプロ野球選手なら誰もがこの気持ちは分かるのではないでしょうか。

 2カ月という自主トレ期間を経て、ついに始まる。もちろん全ての選手が『絶対に1軍で活躍する』という想いがある反面、やはり不安もあるのです。

 始まってしまえばそんな不安はなくなるのですが、一番その不安が大きくなるのが、キャンプ初日前夜というわけです。

 その不安がMAXになるとプロの世界で10年以上活躍している選手でさえ、「寝たくない」という言葉が出てくるほど……。

 ちなみに次の日の朝は、目覚ましが鳴り続けているのに全く起きないほど熟睡していました。

石川雄洋と筆者

カリスマ『石川雄洋』

 ユニフォームの着こなしもそうですが、普段から石川さんはなんでもオシャレに着こなすことはファンの間でも有名ですよね。

 一見ハイブランドが好きそうに見えて、実はGUやユニクロなどのファストファッションや韓国アイドルのBIGBANGのライブTシャツを普段着としてよく使用しているんです、石川さん。そしてこれがなぜか様になる。

 野球での石川さんもそうなんです。人の目や誰かの評価を気にするなんてことは一切ありません。自分のために、チームのために、チームが勝つことに一直線なのです。

 あまり多くは語らない性格なので勘違いされることもあり、度々衝突することもあるのですが、誰が何を言おうと自分の信念は絶対に曲げない。媚びを売って何かを得ようとすることもない、仲間想いの石川さん。まさに男が惚れる男というやつです。