1ページ目から読む
3/3ページ目
いわゆる戦前回帰の問題ではない
したがって、これはいわゆる戦前回帰の問題ではない。むしろ戦後75年の間、なぜこういうときに市民が守ってくれる状況を作れなかったのか、という問題だ。ここを真剣に考えなければ、かつての公務員バッシングのようなことが、今後アカデミズムにたいして行われる可能性もなしとしない。
このように学術会議の問題は、一朝一夕に解決するものではない。もちろん、「反スガ」運動も、抗議活動も、やめろというつもりは毛頭ない。好きにやればよろしい。ただ、「水を差すな」といわれ、沈黙を強いられる筋合いもない。
アジア太平洋戦争のとき、彼我の国力を比較して、日本の敗戦不可避と予想したとしよう。それは日本が負けていいと主張していることと、かならずしもイコールではなかったはずだ。これにたいして「非国民」「士気を下げる」「敗北主義」と非難を浴びせかけるのは、同調圧力や精神主義にほかならない。
ここで述べたこともこれに尽きる。いつものように、「どっちもどっち論」や「冷笑主義」という批判は、現実を見えなくするという意味で有害でしかないのである。