日本学術会議の任命拒否問題が火を噴いて、およそ1ヶ月。いよいよ撤回はむずかしい情勢になりつつある。各種の世論調査では、菅首相の説明不足を指摘しつつも、学術会議のあり方見直しについて首肯する意見が次第に増えつつあるからである(朝日新聞、ANN、毎日新聞、JNNなど)。
なぜそうなったのか。その最大の原因は、学術会議の問題が「反スガ」のネタになってしまったことに求められるだろう。
リベラル派がAだといえば保守派は反Aだという
元来、学問の独立や自由は、イデオロギーの左右と関係がない。左翼政権が、右派の学者を弾圧することもあるからだ。ところが今回は、「#スガやめろ」運動と結びついたことで、政府・与党や保守派が「政権を守れ」と擁護側にまわり、「やっぱり撤回する(ただし辞めない)」という穏当な着地の芽が摘まれてしまったのである。
昨今のこのような左右対立は、玉突きに似ている。リベラル派がAだといえば、保守派は反Aだといい、保守派がBだといえば、リベラル派は反Bだという。菅政権を擁護する者の少なからずも、今回の二転三転する説明に納得していないものの、リベラル派が反対しているから、逆張り的に賛成に回っているのではないか。
いかに空疎でも、ことここにいたると「反スガ」側に勝ち目はない。それは、安倍前政権下で明らかになったことだった。