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 そして、最後の手段が“手術”だ。

「昔は手のひらから手首にかけて10センチ程度切開して手根管のじん帯を切る、つまり神経と腱が通るトンネルの屋根をあける手術をしていました。最近はそこまで大きく切開することはなくなり、手のひらの付け根の近くを小さく切開して、手術するケースがほとんどです。掌と手首の2カ所に穴をあけて、内視鏡を入れて手術をする医師もいます」

 ちなみに小﨑医師の場合は手のひらの“手相の線”に沿って2センチほど切開する術式(日帰り手術)を採用している。これなら手術創も目立たない。手のひらは傷の治りが早いので、手術によるダメージも小さいという。

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昔よりも格段に手術の傷跡は小さくなった ©️iStock.com

じつは難しい治療法の選択

 ただ、治療方針の選択はそう簡単ではない。小﨑医師は続ける。

「手根管症候群は、放置しているうちに自然に治ってしまうケースもあります。特に女性の『産後の手根管症候群』は、多くの場合はホルモンバランスが整うと自然に治ることが多く、更年期のケースでも、時間をかけてゆっくり治っていくことがあるのです」

 自然に治るなら手術などせずに我慢しよう、と思っても、いつ治るかはわからないし、もしかしたらいつまで待っても治らないかもしれない。また、発症から時間が経つと神経にダメージが残ったり、筋肉が萎縮してしまうので、手術で痛みは取れてもしびれ残ったり、筋力が戻らなくなることがある。治療方針の決断は「慎重かつ迅速に」。色々と難しい判断が続くというわけだ。

発症から時間がたつと神経にダメージが残ったり、筋肉が萎縮してしまうことも ©️iStock.com

 ちなみに、小﨑医師によると、明け方に痛みが強くなる理由はわかっていないという。

 ストレス社会に生きる現代人には安眠を妨げる要因はたくさんあるので、消せる原因は消しておいたほうがいい。

 毎朝“手の痛み”で目が覚める人は、とりあえず整形外科に相談だけでもしておいたほうがいいかもしれない。