芸能人や著名人の自殺が相次いでいる。芸能人以外にも、自ら人生の幕を閉じてしまうケースは増えているようだ。
いわゆる“コロナ禍”がどこまで影響しているのかは分からないが、当人の悲痛さはもちろん、残された家族や周囲のショックも甚大だ。できることなら思い直してほしい。
一般的に「うつ状態」を克服するには、適度な運動や趣味に興じる、あるいは気の置けない友人との会話などで改善を図るのが有効とされている。
しかし、そのレベルを超えて死を決意してしまった人に、運動やら趣味やらを勧めても意味はない。
もし、その段階に踏み込んでしまった人がこの記事を読んでくれていると想定して、精神科専門医の意見を伝えたい。すべての人を救えるかどうかわからないが、一人でも「生きる」という選択をしてくれることを期待して、この記事を届けたい。
自殺が脳裏をよぎるとき人間には何が起こっているのか
死にたいという思いが強くなった時、それにブレーキをかけて、思いとどまらせる作用を持つのは「基本的信頼感」だ。
名古屋市西区にある名駅さこうメンタルクリニック院長で精神科医・心療内科医の丹羽亮平医師が解説する。
「基本的信頼感とは、子どもの頃に両親から受ける無条件の愛によって獲得する感覚のこと。『あなたがたとえどんな子であっても、ここにいるだけで価値がある。生まれて来てくれただけで私は嬉しい』という愛情を受けることで、『自分は存在していい』『自分は誰かに必要とされている』『自分は誰かから愛されている』という感覚が醸成されます。小さい頃に基本的信頼感をしっかり獲得している子は、成長して心が傷つく経験をしても、一時的に落ち込むことはあっても、『自分を大切にしてくれる人がいるから大丈夫だ』と考え、回復させる力が働くので何事にも前向きになる傾向が強いのです」(丹羽医師、以下同)
一方で、幼児期に養育者との関係が良好でなかった人に、基本的信頼感が希薄になるケースが多く見られるという。