早起きは健康の第一歩。そのこと自体はとてもいいことなのだが、そうはいっても“起き方”というものがある。痛みやしびれなどの不快な症状で早朝に目を覚ます、それも毎朝……となると、話も違ってくる。

 今回は、毎朝“手の指の痛み”で目を覚ますことになってしまった女性のお話です。

しびれて痛い…「眠れない!」

 Y子さん(36)は昨年、初めての出産を経験した。母子ともに健康で、生まれてきた女の子はもうすぐ6ヵ月を迎える。

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 それはとてもおめでたいのだが、彼女には新しい悩みが生じた。手指の痛みだ。

 赤ちゃんが生まれて1カ月ほどが過ぎた頃から左手の親指から中指にかけて「しびれ」を感じるようになった。そしてほどなく、今度は指先に重い痛みとしびれを覚えるようにもなる。

 しびれと痛みは次第に悪化。我慢できなくはないが、我慢するのもつらい程度の苦痛へと発展していく。

 特につらいのが早朝だ。毎朝明け方になると指先に激痛が襲うのだ。ただでさえ赤ちゃんの世話で眠りが浅い彼女は、それ以上眠れなくなってしまう。痛みと慢性的な不眠に苦しみながらの育児を続けているのだ。

 痛み止めの軟膏を塗ったり、温めたり冷やしたりしたが、どれも効果はなかった。ただ一つ、手首を軸にして手を振るような仕草をすると、心持ち症状が和らぐような気がする。

 症状が一番強く出るのが明け方で、時間の経過とともに少しずつ症状は小さくなっていく。ただ、日中も赤ちゃんを抱っこしたり、長時間スマホを操作していると痛くなる。それでも夜にはあまり気にならない程度の痛みになっていくのだが、日が変わって鶏鳴あかつきを告げる時刻には、ちゃんと痛みはぶり返す――という毎日だ。

子どもが生まれてからあらわれた手のしびれ、痛み…。正体は? ©️iStock.com

痛みとしびれの正体

「典型的な『手根管症候群』の症状ですね」

 と語るのは、東京都板橋区にある「常盤台らいおん整形外科」院長の小﨑直人医師。詳しく解説してもらおう。

小﨑直人医師

「手根管とはその名の通り手の根元にあって、その中を神経や腱が通るトンネルのこと。このトンネルの中で、屈筋腱という“指を動かす腱”が何らかの原因で腫れることにより、正中神経という手と腕を支配する大きな神経が圧迫されて、痛みを起す病態です」(小﨑医師、以下同)

 小﨑医師によると、男女比では圧倒的に女性、しかも更年期以降の中高年に多く発症するが、Y子さんのように産後の授乳期に起きることも珍しくはないという。また、男性の場合は建築業のような重労働に従事する人に多く見られる傾向があるという。

男女比では圧倒的に女性、しかも更年期以降で発症する。原因はホルモンのバランスとも ©️iStock.com

「正確なことはわかっていませんが、女性の場合は女性ホルモンが関与しているのではないかと見られています。ホルモンバランスが崩れると腱が腫れることがある。手根管の径は広がらないので、正中神経が圧迫されてしまうのです。一方の男性は、腱の使い過ぎで腱鞘炎が起きて、腱がむくむことが原因となることが多い」