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「ヤクザはしきたりが多くて……」

 前出の指定暴力団の古参幹部が業界の現状について明かす。

「最近は若い衆が全く入ってこない。確かにヤクザには、しきたりが多い。自分が若いころは、親分の事務所兼自宅に住み込んでいた。『部屋住み』といって食事や掃除などのほか、親分が外出となれば車の運転など、ありとあらゆるお世話をしていた。今の若い衆がこういうことをするのは考えられないだろう」

 東京を拠点に活動している別の指定暴力団幹部も、次のように指摘する。

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「ヤクザになる若い衆が少なく、半グレとなる者が多いのはヤクザ業界の縮小も原因の一つ。半グレが大きな事件を起こし、マスコミの報道が過熱していたころは、暴排条例などでヤクザが経済的に苦しくなっていたころと重なる」

(写真はイメージ)©iStock.com

 この幹部が指摘するように、バブル期には6万5000人以上いた暴力団構成員は、バブル崩壊とともに減少。2009年には4万人を切り約3万8600人となっていた。さらに、2011年10月までに全国で暴排条例が施行され経済的な追い打ちとなり、いまでは1万5000人を割りこんでいる。

 半グレの名を全国にとどろかせた「関東連合」OBによる「海老蔵殴打事件」が起きたのは2010年11月。全国で進んでいた暴排条例の整備が完了したのは翌年の2011年だ。暴対法や暴排条例による警察当局の厳しい規制で動きが取れない暴力団よりも、いわば「フリーの犯罪グループ」である半グレの方が自由に活動できるというわけだ。

「一生懸命で真面目。かわいい連中だ」

 勢力拡大を続ける半グレと、縮小傾向が続く暴力団。では、この2つの反社会勢力同士の関係はどうなっているのか。大阪に拠点を構える指定暴力団幹部が、その接点を解説する。

「自分のところにあいさつに来る半グレの連中もいる。当初は、何かしらのシノギをやって他のヤクザとトラブルになった時にいわゆる“ケツ持ち”、つまり後ろ盾になってほしいのかと思ったら、そうではなかった。目的は『仕事を始めたいので出資してほしい』ということだった。

 それでカネを出してやると、その後は律儀に定期的にそれなりのカネを持ってくるようになった。出資してやったカネを振り込め詐欺のアジトに使うマンションの費用などに使ったのだろう」

振り込め詐欺事件で「掛け子」のアジトから押収された携帯電話やマニュアル ©時事通信社

 首都圏で活動している指定暴力団幹部も、同様の体験を語る。

「いわゆる半グレの若いヤツが仕事を始めたいというので、数百万円を出してやったら、それからせっせとカネを持ってくる。どうせヤバイ仕事だろうから内容は聞かなかった。もし、この若いヤツが警察に逮捕された際に、取り調べで『仕事を始めた時の資金はどうした』となり、こちらが事情を知って資金をだしていたとなったら自分にも捜査が及ぶかもしれない。余計なことは知らないほうがよい」

 さらに、この幹部は次のように付け加えた。

「自分のシノギはしっかりとあるが、こうした半グレの連中をかわいがっておく必要もある。一生懸命に仕事して毎月必ずカネを持ってくる。真面目でかわいい連中だ」