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2020/11/23

source : 文藝春秋 digital

genre : エンタメ, 芸能, テレビ・ラジオ

「みんながうっすら気付き始めていること」がネタの基準

 ネタを決める基準は明確にはないのですが、強いて言えば「みんながうっすら気付き始めていること」です。この「うっすら」というのがポイントで、早すぎても遅すぎても良くない。例えば、去年放送した「高級食パン」を題材にしたコントがまさにそうでした。出演するロバートの秋山さんに「『高級食パンって確かに美味しいけど、そもそもパンって焼き立てならだいたい美味しいですよね』っていうコントです」と台本の相談をしたところ、秋山さんも似たようなことを薄々感じていたようで、「それっぽいフォントで書かれた、それっぽい包装に入ってると人は美味しく感じてしまう」みたいなフレーズを入れましょうと提案され、コントが完成しました。

コント「だからなんだよ」 提供:NHK

 つまりこのコントで言うと、「高級食パンって確かに最近増えてきた」という実感が一般にどのくらい浸透しているかが鍵になります。僕自身パンが大好きなので、食パンブームに水を差す気はないのですが、「他人の評価でなく、自分の舌を信じましょう」ということを言いたかったつもりです。みんなが良いと言うと、一斉にそこに流れてしまう日本人の国民性みたいなものがあると感じていて、結局毎回テーマを変えながら、「日本人ってこんなところがありませんか?」ということを笑いの中で描きたいのかもしれません。

“分かりやすさ”には、消費されやすい側面もある

 そして、丁寧に説明し過ぎないことを意識しています。日本のテレビ番組はサービス精神が旺盛なので、分かりやすさとかテンポが良すぎて、それを追求するあまり、似たような番組が増えてきたという印象があります。

 NHKでも「とにかく番組は分かりやすく」ということを新人時代から叩き込まれます。それはもちろん大切なことなのですが、コントの物語の中で全て伝え切るのでなく、見てくださっている方に少し投げかけたいと思っています。分かりやすい番組作りだけが正解だとは思っていません。分かりやすいということは、その分消費されやすいという側面もあると思うからです。以前、ドラゴンクエストの特番を作った時に、ドラクエの生みの親である堀井雄二さんが「プレイヤーに全部を説明しなくていい。分かったような気にさせればいい」とゲームを作る会議で仰っていたのが印象的でした。番組もゲームに共通するところがあると思っています。

コント「フルーツサンド殺人事件」 提供:NHK

 最後に、座長のたけしさんとの忘れられないエピソードがあります。去年12月31日の大晦日、紅白歌合戦の出番を終えられて、NHKの西口玄関までお見送りしました。送迎車に乗り込む直前、たけしさんが僕の方に振り返り「なぁ、今年はもっとくだらないことやろうな」と仰ったんです。たけしさんのその言葉がずっと胸に残っています。

 今年の「コントの日」は、ちゃんとくだらないものに仕上がっていると思います。

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