コロナ禍で生活が激変した今年も、NHKの大型特番「コントの日」が11月23日に放送される。ビートたけし座長のもとに、劇団ひとり、東京03、ロバート秋山ら、稀代のコント師たちが集結し、「新しい生活」をテーマに新作コントを作り上げた。番組の演出を担当する福島明さんがその舞台裏を明かす。
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お笑いの番組は“面白そうな空気”を纏うのが重要
先日「コントの日」のスタジオトーク収録を終え、最後の編集作業に入りました。撮ったコントをメンバーに見てもらい、あれこれトークしてもらうというのが慣例になっているのですが、これが最も緊張する瞬間です。最初の視聴者としてコント職人の皆さんに見てもらうわけですから、冷や汗ものです。
でも、今年は手ごたえがありました。演者の皆さんがリラックスして、純粋にコントを見る時間を楽しんでいる雰囲気があり、3年目にしてようやく空気ができたと感じました。お笑いの番組は、本当に面白いかどうか以前に、まずこの“面白そうな空気”を纏うのが重要だと思っています。NHKの番組は特にそれが苦手で、どこかぎこちなさを感じさせてしまう瞬間がある。今年は、ようやく自信をもって、視聴者の皆さんに見てもらえるものができたと思っています。
僕がNHKに入局して16年が経ちますが、ここ10年ほぼ途切れることなくコント番組(「サラリーマンNEO」や「LIFE!」)に携わってきました。2年前に「コントの日」という番組を企画して、今年で3回目の放送を迎えました。毎年ひとつのテーマを掲げて制作していますが、今年は「新しい生活」です。ほとんどのドラマや映画と同じように、ウイルスが存在しない描き方もできましたが、むしろ今年しか作れないコントがあると思い、あえて描く方法を選びました。世界中が同時に直面しているこの苦境に笑いを練り込んで、ちゃんと残しておきたかったからです。
初見の台本の欠点をその場で見抜いてしまう、劇団ひとり
「コントの日」に出演していただいているキャストは、本当に実力派揃いで、僕が一度は仕事したいと思い、オファーさせていただいた皆さんです。
劇団ひとりさんとは、毎年コントを撮る数日前に扮装の確認と台本の相談をしています。その打ち合わせが楽しくもあり、苦しくもあります。ひとりさんは、初見の台本をさらっとその場で読んで、欠点を見抜いてしまいます。それが恐ろしいのですが、そのチェックのおかげでクオリティがグッと上がるんです。ダメ出しされるときには、よく「これは高尚じゃない」とか「上質じゃない」という独特の表現で言われます。何となく僕らのことを買いかぶっているような気がしないでもないんですが、ハードルは高いです。でも、いい台本は「おもしろい」と褒めてくれて、ムチだけじゃなくてアメもある優しい方です。