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2020/11/17

 代理人の目が優れていれば、選手は自分に合ったクラブでプレーできる。

 彼らはスカウトであり、転職アドバイザーでもあり、サッカー界のエコシステムの中でなくてはならない存在になっている。

 しかし、どんな分野にもルールぎりぎりのやり方でのし上がろうとするダークヒーローはいるだろう。中間的立場を利用し、“暴走”する代理人が現れ始めた。

代理人は時に「悪魔」と呼ばれる 白泉社「フットボールアルケミスト」1話より

60億円以上を稼いだ“悪徳代理人”も

 代表格がイタリア系オランダ人のミノ・ライオラだ。ズラタン・イブラヒモビッチ(ACミラン)、マリオ・バロテッリ(ブレシア)、アーリング・ハーランド(ドルトムント)らを顧客に持ち、「選手でおとぎ話を創る天才」と言われている。

 権謀術数の最高傑作と言えるのが、2016年に起きたポール・ポグバのユベントスからマンチェスター・ユナイテッドへの移籍だ。移籍金が1億500万ユーロというこの超大型移籍において、ライオラはユベントスから2700万ユーロ、ユナイテッドから2200万ユーロ、つまり合計4900万ユーロ(約60億円)を受け取った。

 代理人の仲介手数料は10%前後が相場だが、ライオラは両クラブに巧みにアプローチして約50%もの手数料を稼いだのだ。もしメルカリが仲介料としてこのパーセンテージを設定したら、ユーザーから非難が殺到するだろう。

 のちにハッカーが膨大な契約書を解読し、告発を行った『フットボールリークス』によって、ユベントスはライオラに最低報酬として1500万ユーロを約束していたことが明らかになった。さらに、もし移籍金が9000万ユーロを越えたら、500万ユーロごとに300万ユーロを追加という条項まであったという。

フランス代表のポール・ポグバは2018年W杯の優勝にも貢献 ©JMPA

 もはやポグバの保有権の一部をライオラが持っているようなもので、FIFAの「第三者保有禁止」のルールに抵触する可能性がある。『フットボールリークス』は他にも別の代理人ジョルジュ・メンデスの投資ファンドを絡めた選手売買ビジネスなど、次々に悪事を暴いていった。

 筆者は今、代理人を主人公にした漫画『フットボールアルケミスト』の原作を担当している。

 主人公の先崎恭介は、“裏取引”においてライオラやメンデスに負けていない。

代理人は「ダイヤの原石」を探し求める 白泉社「フットボールアルケミスト」1話より

 契約選手をブラジルU20代表に選ばせるために代表監督に賄賂を渡す。契約選手を入団させるために、クラブの会長にキックバックを振り込む――。

 証拠が残りづらくなかなかメディアで報道されないが、“必要悪”としてまかり通っている手法だ。一部の代理人が「フットボールマフィア」と呼ばれるのは、決して大げさではない。