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バルサにマンC、アーセナルも…大クラブが“超インテリ”を続々登用 AI vs 代理人「仁義なき戦い」

2020/11/17

 トラッキングデータを数理モデルに入力して「チームに本当に必要な選手」を見つけだし、獲得することで、リバプールは現代最強のサッカークラブとしての地位を確立していった。

 そして近年、そんなリバプールの成功を受け、他のビッグクラブでもAIを使ってデータ分析ができるデータサイエンティストの雇用がブームになりつつある。

データ分析に力を入れるビッグクラブたち

 バルセロナは2016年1月、カタルーニャ工科大学で人工知能の博士号を取ったハビエル・フェルナンデスをスポーツアナリティクス責任者に抜擢。最近フェルナンデスは、NBAのサクラメント・キングス副会長も務め、サイモンフレーザー大学教授のルーク・ボルンと共同で、「その攻撃でボールを失うまでにゴールする確率」を予測するモデルを発展させている。

バルセロナは人工知能の博士号を持ったアナリストを採用 ©文藝春秋

 ベンフィカは2017年7月、マイクロソフト社でプログラムマネージャーだったスダルシャン・ゴパラデシカンをスポーツデータサイエンス責任者に採用。マンチェスター・ユナイテッドは今年、データサイエンティストのチームを立ち上げたいと考えており、そのリーダーになれる専門家を探している。

 マンチェスター・シティを所有するシティ・グループでは、デロイトでコンサルだったリー・ムーニーが2014年からデータ活用に取り組んできたが、自身の起業のため昨夏に退任。ボルトンの分析部門で約8年半活躍したブライアン・プレスティッジが責任者に昇格した。資金豊かな彼らも、立ち止まれば時代に取り残される。ここまで書いてきたように、時代は「いかにAIを使うか」というフェーズに突入している。シティは2019年6月に初めてデータサイエンティストを募集し、マンチェスター大学との連携にも取り組み始めた。

アーセナルは『Candy Crush』制作者を獲得

 イギリスの人気クラブであるアーセナルもこの分野の先駆者だ。

 もとともアーセナルは2012年にアーセン・ベンゲル監督のゴーサインを受け、アメリカのStatDNA社を買収。同社のシステムをクラブ内に組み入れ、パフォーマンスの数値化に挑んできた歴史がある。 そして2018年、ミハイル・ジルキンとスザンナ・フエレラスという“超一流”データサイエンティストを補強した。

日本でも人気が根強いベンゲル監督 ©文藝春秋

  ジルキンはモスクワ物理工科大学在学中に、『ロードランナー』など古典ゲームのリメイクを販売するサイトを立ち上げて大成功した有名人。のちに大手ゲーム会社の制作リーダーとして世界的ヒットゲーム『Candy Crush』を生み出した。応用物理・数学の修士号を持っている。

  スザンナ・フエレラスはスペイン国立通信教育大学で人工知能の修士号を取り、大手通信業者のテレフォニカやボーダフォンでデータサイエンティストを歴任してきた。2人がいれば、数年後にリバプールとは異なる形でイノベーションが起こるかもしれない。

 ドイツサッカー協会は2018年2月、フラウンホーファー研究機構・実験ソフトウェアエンジニアリング研究所のパスカル・バウアーを、アカデミーのデータサイエンス&機械学習のマネージャーに招き入れた。バウアーはドイツ6部クラブの監督経験があり、UEFA指導者Aライセンスを持っている。新時代の文武両道ともいえるだろう。