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「反政府運動」というパワーワードが持つ意味 “説明拒否”という力技は外交では通用しない!

学術会議任命拒否は「思想による排除」

2020/11/17
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 毎日新聞の世論調査で私が注目したのはここ。

《菅政権が学術会議のあり方について見直しを検討していることについては、「適切だ」が58%で、「適切ではない」の24%を上回った。「わからない」は18%だった。野党は「論点のすり替え」だと批判するが、学術会議の改革を求める声も強いことがうかがえる。》(毎日11月8日)

安倍政権時代も水面下で選考に関与したと言われる ©JMPA

 今回のポイントだ。任命拒否の説明に納得できない人が世論調査でも多いが、政府は学術会議の「あり方」問題を提起してきた。別の話を持ってきて防戦してるように見えた。

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 ところがそれが結構な効果を生み『政権運営に与える影響は、今のところ限定的と言えそうだ。』(読売)という「評価」にまでなったのだろう。

勝負あった学術会議問題』(産経11月12日)という記者コラムを読んでも、支持率に響いていないから学術会議ハイハイもう終わり~という雰囲気だが、しかし素朴な疑問がある。

国会では世論調査の結果で説明がいらないのか?

 国会というのは世論調査の反応次第で「説明しなくてもいい」という場所になるのだろうか。視聴率がイマイチだから違う話題にしようというのは民放のワイドショーとかならわかるが、事は「思想で排除」(by信濃毎日)という案件である。

 この振る舞いが説明なしでオーケーとなればそのうち学者だけでなく一般にまで広がってくる怖さがある。実際、6人の学者に教わっている生徒は今「世間」の反応を見てどう感じているだろうか。そこまでケアする必要がある案件ではないのか。

 学術会議ばかりでなく早くコロナをという声もあるが思い出してほしい。モリカケ桜ではよかった振る舞いが緊急事態のコロナではさすがに「過程」を問われたではないか。アベノマスクや一斉休校の過程が丸見えになり、不思議に思われたではないか。コロナ論議を国会でじっくりやるためにも学術会議の説明が必要なのだ。これすらクリアできないとまた不安になる。説明はどんな問題にもついてまわる。

対露外交に力技は通用しなそう ©JMPA

 あと、国内なら力技で押さえこめても外交交渉で同じような答弁力や振る舞いをしていたらつけこまれる。バイデン、プーチン、習近平、文在寅、金正恩らは失態を見逃さないだろうし、ネチネチやってくるだろう。

「説明しない」という問題は日本の国益を考えても心配になる。保守を自負する新聞こそ言ってあげるべきなのである。

 

「反政府運動」というパワーワードが持つ意味 “説明拒否”という力技は外交では通用しない!

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