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ヤクザも企業も、感覚的には昭和のまま

 東北だけを特別視するのは酷かもしれない。暴力団排除がやかましく言われ始めたのは、ここ7、8年である。

「昔から話はあったんだ。ヤクザの看板を持ってる業者は排除されるって噂が浮かんでは消えていった。具体的な話になってからまだ10年も経っていない。取り締まりの厳しい西側……九州なんかじゃもっと早かったかもしれないが、東北なんかじゃまだまだだろう。ヤクザもそれを使う企業も、感覚的には昭和のままで、厳しい取り締まりなんてほとんどなかったんじゃないか」

 事実、1Fの原発関連企業には、現役暴力団員が役員となっている会社が存在した。登記簿をあげれば一目瞭然だから、警察が把握してないのはおかしい。

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(写真はイメージ) ©️iStock.com

「まぁ、気持ちはわかるんだよ。理由? 簡単に言えば見栄だ。俺はヤクザだけじゃない。きちんと会社も経営して、社長に就任してると周囲に言いたい。つまり社長の名刺が欲しい。自慢の種にしたいんだ。単純だろ、社会から爪弾きにされている分、そういった気持ちがヤクザにはある。

 最近じゃ親族や友人……といっても実質、若い衆みたいなもんだが、表面上はそいつらに経営させている会社が多いだろう。果実だけもらえばいいわけで、そのへんは割り切る必要がある。時代をとらえる感覚には個人差、地域差があるんだろう。でも、これだけ世間から注目されれば、東北だってヤクザは地下に潜るしかない」

どうしたらいいのか途方に暮れてる

 8月過ぎ、フクシマ50の暴力団員が所属する協力企業が、プラントメーカーから契約を解除された。はっきりした時期と経緯は不明だが、この会社の役員名簿には暴力団幹部の名前が載っていた。高らかに暴力団排除を宣言したわりに、福島県警や東電はその事実を発表しようとしない。

(写真はイメージ) ©️iStock.com

「ちょっとくらい隠しておいてくれれば、なにもかもヤクザに責任を押しつけられた。『巧妙に偽装されていたので見逃してしまった』と言い訳できた。でも、あれだけおおっぴらだと、さすがにこれまでなにをやっていたのか責任を問われる。長いことズブズブだったんだから、県警は地元のフロント企業をほとんど把握してると思う。分からないんじゃない。手が付けられない。原発事故と同じだ。どうしたらいいのか途方に暮れてるんだ」(広域組織幹部)

 この幹部に言わせれば、すでに1Fに入っている暴力団関連企業を追い出しても、さほど意味はないという。

「マスコミが注目してるのは原発だけ。そこから追い出したところで、放射能のおかげで他にいくらでもシノギはある。20キロ圏内の瓦礫撤去、近隣の建設工事、県内で盛んになっている除染ビジネス……ダンプも人間もそっちに回せばいいだけだ。それに原発の復旧作業は、どんどん単価が下がっている。企業が変われば、人夫の流れも変わる」(同前)