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「金くれる人がいい人に決まってる」 組長が証言する“ヤクザと原発利権”

『ヤクザと原発 福島第一潜入記』より#18

2020/11/29

source : 文春文庫

genre : ライフ, 社会, 読書, 医療, ヘルス

 30年近くヤクザを取材してきたジャーナリストの鈴木智彦氏は、あるとき原発と暴力団には接点があることを知る。そして2011年3月11日、東日本大震災が発生し、鈴木氏は福島第一原発(1F)に潜入取材することを決めた。7月中旬、1F勤務した様子を『ヤクザと原発 福島第一潜入記』(文春文庫)より、一部を転載する。(全2回の2回目/前編を読む)

狙うのは原発の新規建設

 いちいち値打ちを付けて話す親分に対し、これ以上の取材は無駄と判断して撤収した。

(写真はイメージ) ©️iStock.com

 原発利権を具体的に証言してくれたのは、広域指定暴力団の3次団体組長である。ナーバスな話だけあって、地域は“関東”としか明かせない。

 暴力団関連の土木建築会社が狙うのは、原発の新規建設らしい。

「ずっと前から発電所関係だけじゃなくて……ああいうのはプラント工事っていうんだけど、化学工場とか、食品会社の設備とか、もともとそういう仕事にうちらの会社が入ってたわけだ。当時はヤクザの会社だってうるさく言われなかった。みんな仲良くやってたんだよ。労働組合っていうのか、労働基準協会の会員になることもできた。原発の仕事の場合、そこから『資格を取りませんか?』って誘ってくれる。急場のときは講師の資格を持った人を派遣してもらって資格を取らせたりすることもあった。

(写真はイメージ) ©️iStock.com

 ただ狙うのは新規工事限定だ。一発工事のほうがはるかにラクだし、ヤクザに向いてる。面倒がないからな。民間会社なら定修(定期修理工事)、原発でいうなら定検(定期点検)ってのは2カ月くらいで終わってしまうし、ずっと営業しなきゃならないだろ。新規に入れば最低、2年くらい仕事が続く。その間はなにもせずに飯が食える。新規の工事に入り込めれば、うちらが顔を出す必要なんてない。現場の責任者に金渡して、月に1回くらい上の人間と飯でも食ってこい、と言っておけばいい。

 それぞれの地域に必ず同業者の会社がある。そういったネットワークを使うこともあるが、自分たちで営業する時もあるよ。

 ちょっとした大手の依頼で、たとえば製鉄所のメンテナンスに入ったとする。そこで偶然一緒になった人とか、そういう繫がりで『次になんかあったらお願いしますよ』って声をかけておくわけだ。もちろん俺たちは表に出ない。それは従業員にやらせる」