1ページ目から読む
2/3ページ目

「私は、死ぬつもりはありません」

 そして、白石被告を信用させるためだろうか、自ら自身の写真を撮って送信している。白石被告は、お金を引っ張れるヒモになるか、ヒモになれないなら、失神後にレイプして殺害しようと思っていた。この時点でIさんに収入がないと判断し、殺害を決意している。

「一緒に死のうというやりとりをしていました。私は、死ぬつもりはありません。お金がないとわかり、レイプして殺害しようと決めました」

白石被告の裁判が行われている東京地裁立川支部 ©渋井哲也

 それまで、白石被告の犯行は、自宅に呼んでからヒモになれるかを判断し、できないなら失神後にレイプして殺害し、所持金を奪うという手口だった。しかし、Iさんの場合は、会う前から「お金がない」と判断し、すでに“見極め”を行っていた。他の被害者とは違う手順だ。

ADVERTISEMENT

 9人を殺害したことから、それぞれの殺害状況と混同したり、忘れてしまっていることが多いが、イレギュラーなことが起きた場合は、「覚えている」と述べることが多い。そのため、会う前にレイプして殺害する決意をしたことは、白石被告の中では、特異な点として記憶に残ったのだろう。

弁護側は「Iさんは、死を決意していた」と主張

 待ち合わせ場所はJR八王子駅だった。時間は13時45分ごろだ。Iさんは白石被告に会う前、白石被告へのDMで〈楽しみにしています。ワクワクしています〉と送信するなど、楽しみにしている様子もあった。

「(8人目の)HさんとIさんの2人は、他の人と違った特徴がある。白石さんから電車に乗って迎えに行っている。特に、Iさんの場合は、お金がない白石被告が、わざわざ(小田急線)町田駅まで行き、(JRに)乗り換えて八王子駅まで行っています」(弁護側中間論告)

町田ー八王子間の移動に使われたJR横浜線 ©iStock.com

 Iさんと合流したとき、白石被告が「私の部屋で首を吊るか、Iさんの部屋でするか」と聞くと、Iさんは白石被告の部屋を選んだという。以前のDMで、白石被告は「部屋にロフトがある」ことを伝えており、Iさんは知っていた。弁護側はこの点を強調し、「Iさんは、死を決意していた」(同)と主張している。

 合流後、白石被告とIさんは、八王子駅から町田駅へ向かい、JRから小田急線に乗り換えて、14時47分、相武台前駅に着いた。そして、15時ごろには白石被告のアパートまで行くことになる。

「合流した直後は、私の部屋で自殺しましょう、という会話はありましたが、その後は、自殺の話はありませんでした。楽しそうに話をしていたので、出会い目的かと思いました」