地球との「一対一」の再会
それは言い換えれば「生きている地球がそこに確かにある」という実感であり、作業中にふと地球の方に目を向けるとき、それが自分に何事かを語りかけているような気さえしたという。
「ふと目の前にある地球が一個の生命体として――ある意味では自分と同じ生命体として――宇宙に存在しており、いまこうして僕らが話をしているように、そこに一対一のコミュニケーションが存在するかのような気持ち……」
この言葉はそのとき胸に生じた感覚を、彼がどうにか言語によって表現しようとしたものだった。
「あのときに自分が見たもの、感じたものはいったい何だったのか」
帰還後もずっとそのことを考え続けてきた、と彼は話した。
ISSへのドッキングが成功した後、野口さんは『鬼滅の刃』のセリフを借りた次のようなメッセージを発している。
「日本の皆様、クルードラゴン運用初号機、無事にISSにドッキングしました。国際パートナーの一員として、民間宇宙船のドッキングに立ち会えてとても幸せです。我々レジリエンスクルーは訓練の間、打ちあがった後も様々な困難な状況に直面しましたが、全集中で乗り切ってきました。これから半年間の宇宙滞在もみなさんと感動を分かち合いましょう。 All for one, crew-1 for all」
前回のフライトから11年、初めての船外活動からは15年の歳月が経つ。
今後、この「crew-1」ミッションの一員としてISSに滞在する中で船外活動が実現すれば、野口さんは地球との「一対一」の再会を果たすことになる。そのとき彼は何を感じ、どんな体験をそこから持ち帰ってくれるのか。ミッションの成功を祈るとともに、帰還後に伝えられる言葉にも注目したい。
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稲泉連氏の著書『宇宙から帰ってきた日本人』より、野口聡一さんのパートを一部抜粋しました。