「とにかく女はカネになる」
今回のスカウト狩り事件の背景には、スカウト業界の繁栄ぶりがあるという。歌舞伎町の事情に詳しい男性が解説する。
「スカウト側はキャバクラなどに女性を紹介すると、店で働いている期間は売り上げのうち数%がバックされる取り決めがある。このシステムを業界では『スカウトバック』と呼んでいる。かなりな金額になるいい商売だ。かわいい顔していれば客はいくらでも付く。とにかく女はカネになる」
前出の飲食業界の女性は、スカウトによる紹介先について説明する。
「スカウトからすれば女の子のスペックによって売り上げが変わる。まず顔が美人であることが必須。顔のレベルによって紹介する店が違う。まず美人はキャバクラ。そうでなければ、それなりの店に紹介する。
歌舞伎町の特徴としては、若くて美人であればそれでよいという土地柄。銀座や赤坂とは違い、20代という若さは必要だけれど多少は下品で構わない。最初はキャバクラで働いていても、中には稼げない子もいる。稼げなければ風俗店に転籍することもある」
ひとたび稼げる女性を“夜の街”に送り込めば、巨額の利益を得る。だからスカウトは、歌舞伎町を歩いている女性に必死に声をかけ続け、しつこく付きまとうことになる。
スカウトは、まずは女性とLINEの連絡先を交換することがマニュアル化されている。「30~40人と連絡を取れるようにしておいて、1人でもカネになる女がいればよいという感覚」(前出・飲食業界の女性)という。
全国から集まってくる女性たち
かといって、歌舞伎町で女性が強引にスカウトされて働かされているという訳ではない。歌舞伎町のスカウトが隆盛である理由には、“夜の街”で稼ごうという若い女性が、関東だけでなく全国各地から集まってくることがある。
コロナ禍とはいえ、忘年会シーズンを目前に控え、飲食店にとっては稼ぎ時であると同時に、女性たちの間ではサイドビジネスも盛んになるという。
スカウト狩り事件の容疑者も逮捕され、歌舞伎町で吹き荒れたスカウト狩りの暴力が収束を見せたことで、ようやく落ち着きを取り戻した。夜の街で働くスカウトの男性だけでなく、スカウトされて夜の店で働く女性たちもたくましさ、したたかさを取り戻しつつあるようだ。