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「煽り」と「ひょっこり」

 辞書からその言葉が消えるって、さみしいですよ。その言葉を使う人が少なくなって、言っても通じなければ、残念だけれどもう残せない。スペースには限度がある。新しくて、使われる頻度が高い言葉にその大事な場所を譲らないといけない。それは、本棚、クローゼット、押入れ、みんな同じではありませんか。辞書から消えれば、たぶんもう目に触れる機会はないはず。それなら最後にその言葉を見ておこう、こんな言葉があったのだな、と思いたい。そのために照らし合わせをしたいのです。

 新しく増えた言葉を見てみましょう。

「煽り運転 道路を走行する自動車や自動二輪車などに対し、後方から高速で迫り、異常接近したり前方に急に割り込んだり、また、パッシングしたりするなどして、相手を威嚇し恐怖を与えて、重大な事故を引き起こしかねない悪質・危険な行為。」

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煽り ©️文藝春秋

 はい、本当にそうだ。煽り運転をされて亡くなった方だっている。この言葉が載って良かった。昨年話題になった例の煽り運転で、一緒に乗っていた方、あれからガラケーをスマホに変えたのだろうか。気になっています。

 それから10月27日付け毎日新聞に「自転車に乗って車に『あおり運転』をした」男が再逮捕された記事が出ている。「桶川のひょっこり男」のことだ。九版では、煽り運転は車だけではないという記述も加わるかもしれない。

「ひょっこり 予測もしなかった(望ましい)事態にめぐりあう様子。」

 うーん、「ひょっこり」にも手が入るかもしれないですね。これも、要観察物件です。

 五版から新しく出てきた「ラフランス」なのですが、六版ではなくなってしまい、でも七版で復活しています。

 五版「ラフランス 西洋ナシの新しい品種。フランス原産。やや小ぶりで濃い緑色。でこぼこして形は悪いが、とろけるような味と香りがいい。」

 七、八版「洋ナシの一品種。皮は薄緑色で、果汁が多く、香りがよい。」

 五版のラフランスと七、八版のラフランスって皮の色も違います。とろけるような味についても、もう言及していない。これは、同じラフランスなのでしょうか。疑問を感じる。五版では、ラフランスへの愛を感じるのに、七、八版では淡々としている。新解さん、一体どうしたの。たぶん、六版で何かがあったはずです。それは今はわからない。九版のラフランスにヒントがあるかもしれません。今から、静かに待ちましょう。