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無茶すぎる「踊る」

「踊る (一) 音楽に合わせて勢いよく足を上げ下げしたり前後左右に動かしたり何かを軸に回転させたりまた、それに伴って手や腰の動きを加えたりする。」

 毎回、「踊る」を引く度に、「これは無茶だよ、言葉で説明するのは大変だ」と思います。

 踊りと言ってもいろいろある。白塗りの麿赤兒さんが舞台の真ん中で手をにぎにぎさせているだけで、圧倒される「舞踏」もあるし、盆踊り、バレエ、日本舞踊、フラメンコ、みんな踊りです。前に激しい踊りで有名なモダンダンスの方の舞台を見に行ったら、ダンサー全員が寝たままで、最初から最後までぴくりとも動かないで終わったことがありました。あれも屁理屈では踊りになるのかもしれませんが、全然いいと思わなかった。やっぱり踊りは動かないと、見ている側は退屈です。

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 新解さんは、この語釈にするために自分でも何回か、そうやって踊ったと思う。時代小説を書く先生が、ご自分で刀を振るってみるのと同じですね。

©️文藝春秋

「踊り」の語釈を見て思いましたが、延々と言葉を使って何かを説明するのだけれど、決してずばりとは説明出来ない感じ、これはワインや香水の説明と似ていると思いました。

「ニュイドゥ イッセイ オードパルファム」という香りが好きで、今、使っていますが、その商品の説明文を見て下さい。

「夜の月、自然の力と魅惑を表現したパルファム。夜のパワーをまとうかのように。月夜の晩、神秘と力が宿る自然に抱かれて、五感は研ぎ澄まされ、高まる感情。強い磁力を発するかつてないコントラスト。柑橘類、スパイス、レザーノートが広がる光あふれる香り。」

 さあ、どうですか、みなさん。ものすごい力技です。香りを言葉で説明する方は、表現力の鍛錬のために日頃からどんなことをなさるのでしょうか。どうしたら、思いがけない言葉を総動員してこんな風に説明出来るのでしょうか。驚きました。

「で、使ってみてどんな香り?」と、わたしが実際に聞かれたら、「ほら、こんな風に落ち着いたいい香り」としか言えません。これでは全然説明にならないし、販促につながりません。