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「異性に、力ずく」“新解さん”のセクハラ表現は第八版ではどうなった?〈煽り、下着、家事、ラジオ、別居、唇…〉

『新明解国語辞典』第八版の研究 #2

2020/11/23

「新解さん」は着物を着る人に違いない

 わたしは、今回の改訂で「丸寝」が消えるのではないないか、と心配していました。

 八、七、六版「丸寝 着ていた着物を寝間着などに着がえないままで寝ること。」

 五、四版「着物を着たままで寝ること。」

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 三、二、初版「着物を着たままで寝ること。ごろね。」

 今は、着物を着る人って少ないですよ。そういう時代に、着物を着たまま寝てしまう人って、やっぱり、すごく少ないと思う。だから、この「丸寝」という言葉の需要は少ないと思ったのです。でも八版に残った。とても不思議です。

 それに、着たまま寝てしまう着物って、どんな着物ですか? 今、わたしは着物スタイリスト・大久保信子先生に着付けを習っているのですが、先生に「丸寝」を見ていただき、

「着たまま寝てしまう着物って、何ですか?」

 と、うかがいました。

「こういう言葉、初めて聞いたわ」と、大久保先生はおっしゃいました。先生は丸寝はなさらないのですね。

「そうね、たぶん普段着だろうから、木綿かウールとか銘仙とかかしら。錦紗じゃないわね。いくらお金持ちだからといって、振袖の訳はないし」とのことでした。

 新解さんって、着物を着る人ではないかな、と思っている。

©️文藝春秋

「下着 〔「下」は、内側の意〕服や着物の着崩れ・汚れの防止や、保温・防寒のために着ける肌着。一般にはそのままのかっこうでは人前に出ないものとされる。じゅばん・シャツ・すててこ・スリップ、下穿きなど。アンダーウエア。」

 下着と言われて、着物に使うじゅばんが一番最初に来るのは、着物を着る新解さんにとって、それが身近だからではないかな、と思う。もしかしたら、新解さんも丸寝しているのかもしれない。はい、これも九版で確認しないといけない。