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9年ぶりの改訂“新解さん”は「知ってる言葉を辞書で引く」のが楽しい〈「LGBT」も登場〉

『新明解国語辞典』第八版の研究 #3

2020/11/23

“新解さん”の愛称で知られる『新明解国語辞典』。9年ぶりの改訂版となる「第八版」が11月19日に発売となった。人間臭くて、読んで楽しい辞書といわれる“新解さん”は、新版で何に興味を持ち、何に怒っているのだろうか――。

 赤瀬川原平氏のベストセラー『新解さんの謎』の担当編集者であり、自身も『新解さんの読み方』『新解さんリターンズ』(夏石鈴子名義)を出版した鈴木マキコ氏が、いち早く第八版に目を通して、読みどころをレポートする。

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八版から加わった「LGBT」

「LGBT レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字。性的マイノリティーの総称。」

 八版に追加された言葉のひとつです。本当は「その人」は八版以前からずっと存在していたはずなのに、表立って言えなかった、そういう時代だったということです。

©️文藝春秋

 毎日新聞10月6日付記事では、足立区議・白石正輝氏(78)は「LだってGだって法律で守られているという話になれば足立区は滅んでしまう」と発言した、とある。

 10月7日付記事では、白石正輝氏(78)は自分の発言に対して、「当事者が不快と思っても別に良い」と反発し、発言の撤回や謝罪をする意思はないという、とある。

 全くとんだ「公僕」がいたものだ。

「公僕 〔権力を行使するのではなく〕国民に奉仕する者としての公務員の称。〔ただし実情は、理想とは程遠い〕」

 10月21日付記事では、白石正輝区議(79)がLGBTなど性的少数者を巡り差別的な発言をしたとして問題となり、20日の区議会本会議で発言を撤回して謝罪した、とある。

 わたしが思ったことは三つある。

(1)差別的な発言を撤回したのかもしれないけれど、「不快と思っても別に良い」という考えはどうなったのか。この先も、人を不快にしても平気なら困る。
(2)自分の差別的な発言を、本心から悪いと思っているのか。
(3)発言してから撤回する間に、お誕生日が来て79歳になったのですね。てんびん座ですね。

 と、いうことです。

「猫田君、足立区のLGBTの人たちに差別発言をした区議の人、お誕生日だったみたいよ。当日、どんな風にしてお祝いしたのかな」

「LGBTの人が大勢お祝いに来たんじゃないすかね」

「お、猫田君、センスいいね」

 わたしは、白石区議に79歳のお祝いに新解さんの八版をプレゼントしたい。白石さんだから、白い版がいいかな。白い函に赤い帯が良くはえて、とてもおしゃれです。そして「LGBT」の項目に赤い線を引いて青い付箋を付けて贈ります。

©文藝春秋

 

 この時代を生きる公僕として、白石区議には新しいボキャブラリーを増やして、LGBTを含めた国民に奉仕していただきたいです。新しい一年のご健康とますますのご活躍を心からお祈りしますよ。