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「え、辞書って本なんすか?」

「あのー、鈴木さん。そもそもなんですが、なんでそんなに辞書を読むんです」

「だって、これ、本だから。こんなに分厚い本に、どんなことが書いてあるのかなって、気になるから」

「え、辞書って本なんすか?」

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「本だよ、これは」

©️文藝春秋

 そうです。新解さんを見てみましょう。

「本 (一) 人に読んでもらいたいことを書い(印刷し)てまとめた物。書物」

 新解さんには読んでもらいたいことが、たくさん書かれている。どこも間違っていない。辞書は本です。

「猫田君、みんな自分の知らないことを辞書で引いて、教えてもらおうとするでしょ。それが、まずダメ」

「え、ダメなんすか」

「ダメだよ。それは大間違い。自分が良く知っている言葉を引いて、自分の考えと新解さんの考えを比べてみないといけないの」

「いけないんすか」

 それでは、新解さんの「つみほろぼし」を例にしてご説明します。

「罪滅(ぼ)し 何かよい行いを(少し)して、今まで重ねて来た罪のうめ合わせをすること。」

 新解さんは、こうおっしゃっている。そうか、悪い事をしても、少しだけ何かいいことをすればそれでちゃらになるのか、へー、楽ちんだね、と新しい知恵がつく。素晴らしいですね。そうやって自分の(未熟な)意見と新解さんの意見をすり合わせることで、人間は賢くなれる。

「賢者 世の移り変りに盲従したり政治の表面に出たりせず、宇宙の哲理を見抜いて静かに暮らす人。」

 まあ、これほど賢くならなくても、わたしはいいですけど。それに、賢者は歌や踊り、楽器の演奏はしないみたいですね。