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多くの関係者が語る北岡氏のセクハラ・パワハラ 

 愛成会の職員らに取材をすると、複数の職員や関係者が取材に応じた。

 誰もが北岡氏のセクハラは常態化していると声を揃えた。

北岡氏が理事長を務める社会福祉法人「グロー」

 北岡氏はお酒が入ると、まだ酔いも回らないうちから女性職員に「一回やらせて」「彼氏とどんなエッチをしているんだ?」「帰ったらセックスするのか」などと延々、たずねるのがお決まりだった。ある職員は、北岡氏は性に対して異常な執着があると感じると話す。

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「日常的なセクハラが飲み会だけでなく、業務中の移動の時にも続くのです。愛成会の男性理事も同席していましたが、止めるどころかいっしょに盛り上がっていました。その場にいることそのものが苦痛でしたが、うそでも盛り上がるふりをしなければ、北岡氏とは一緒に仕事ができないのです。愛成会やグローの職員で北岡氏と関りがある職員であれば、同じような場面に遭遇している人は多いと思います」

 また、北岡氏がAさんのいないところで、「Aは2人になると甘えてくる。俺はダメだと言っているが、Aが言うことをきいてくれないんだ」と話すのを、複数の職員が聞いている。Aさんの友人のひとりは、こう憤る。

「北岡は『事業団(グロー)の職員たちが、本当に俺とAが付き合っていると思って聞いてくるんだよ。俺は付き合ってもいないのに、Aとの噂をたてられ損しているから、1回くらいやらせてほしい』と話していました。これが人権や人間の尊厳と向き合う社会福祉法人の代表かと思うと暗澹たる気持ちになりました」

職員との飲み会の席での北岡氏

「北岡さんの指示は絶対。それに従うように」

 Aさんだけでなく、北岡氏の日常的なセクハラ、パワハラの言動に嫌気が差し、愛成会の理事や上司に相談を持ち込んだ人は多数いる。しかし、部下がそう訴えても、「北岡さんの指示は絶対なので、その指示に従うように」と言われて無視され続けてきた。井上理事長もその1人だった。

 2018年8月。Aさんに転機が訪れる。東京・中野で行われた飲み会で、会計をしている時に突然、北岡氏が胸を触ってきた。「やめてください」と強い口調で言ったが、「いいじゃないか」とさらに触ってきた。Aさんが「本当にやめてください」と語気を強めると、北岡氏は渋々、その手をひっこめた。

 Aさんは我慢の限界だった。人をまるでモノのように扱い、対等な人間としての人権や人格、尊厳を軽視する振る舞いを許せなくなったのだ。その年、世界を席巻していたのが「#MeToo運動」だった。これまで性的被害に遭いながらも、声をあげることができなかった人々が、SNSを通じて被害を告白しはじめたのだ。